第13話 『日暮里駅階段すれ違いの邂逅』
魔法少女マヂカ・013
『日暮里駅階段すれ違いの邂逅』語り手・ブリンダ
安倍という教師が助かったのは超常現象ということになった。
安倍を撥ねた、いや、撥ねかけたセダンのドライブレコーダーには撥ねられる寸前の安倍が写っていた。
それが、ぶつかる寸前にフッと消えてしまったように記録されている。
消えた安倍は、数分後にビルの非常階段からキツネにつままれたような顔で降りてきて、セダンのドライバーを驚かせた。
ドライバーも周囲の通行人も、車体の下に巻き込んだか。あらぬ方向に撥ね飛ばされたのではと、通報で駆け付けた警察官といっしょに探していたのだ。
「アハハ、うちの先祖は安倍晴明だって伝説がありますから(^_^;)」
本人は笑ってごまかしていたが、わたしには分かっている。
あれは、魔法少女マヂカの仕業だ。
制服から都立日暮里高校に潜り込んでいることは分かった。使い魔を飛ばして調べてみると、渡辺真智香として在籍していることが分かったが、初期設定のずさんさや油断からボロが出始めている。安倍という女性教師はマヂカが生徒であるという暗示がかかっていなかったし、箸を使わずに弁当を食べるというポカから、調理研究部を作らざるを得なかったなど、笑ってしまうことばかりだ。
オレも日暮里高校の生徒になってもいいのだが、それでは芸がない。
地勢的に日暮里を見下ろす位置にあり、最寄りの駅はマヂカと同じ日暮里駅という千駄木女学院を選んだ。
わたしも七十二年ぶりの復活だ。少しは楽しんでみたいと言う気持ちもある。まずは出会いを演出しよう。
マヂカは名前も姿形も変えているが、わたしはマンマだ。
ブリンダ・マクギャバン アメリカからの交換留学生。ヘアスタイルが変わって千駄木女学院の制服を着ているという以外、見かけに手は加えていない。
日暮里駅の構内で三回すれ違った。それなのに奴は気づかない。
一度は、調理研究部の仲間といっしょなので、知らないふりをしているにかと思ったが、その次も知らん顔。
今日は改札近くの階段ですれ違うことにした。マヂカはこだわりなのか、一人の時は階段を使うのだ。
オレは上り、マヂカは下り。お互い顔は正面を向いているが、体を開くようにしてすれ違う。
瞬間、マヂカは――ア?――という顔をした。
異変に気付いた時は、お互い、階段の上と下に達している。
オレは、マヂカの目を見ながら得物をヒラヒラと振ってやった。すれ違いざまに縞柄のブラを抜いてやったのだ。
階段の上から眺める奴の狼狽えた顔は見ものだった。
しかし、違和感……
やつは、頬を染めたままニッコリすると、花柄のパンツをヒラヒラさせた。
その時、通貨電車の風圧が疾風となって階段を駆け上がってきた。
翻るスカートをとっさに抑えたすきに逃げられてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます