第11話『よろしくお願いしまーす!』
魔法少女マヂカ・011
『よろしくお願いしまーす!』語り手・安倍清美
頼まれごとの一つは常勤講師になってくれちゅうことだった!
同じ講師でも、頭に「非」の字が付くか付かないかで大違いなんだぞ。
非常勤講師は週に何時間かの授業を教えるだけ、一時間教えていくらっちゅう、まさにアルバイト。月収十万以上を確保しようと思ったら二校以上持たなきゃならない。
常勤講師ってのは、担任以外の仕事を全部やる。ほとんど本職さんと同じなんだぞ。
当然ギャラもイッチョマエに頂ける。嬉しい限りだ。
ただ、教科が国語以外に保健体育を受け持つ。免許は国語以外に地歴公民と保健体育を持っているんで、まあ、ラッキーなわけです。
もう一つの頼まれごとは部活の顧問だ。
「安倍先生、一昨日できたばかりなんだけど、調理研究同好会の主顧問やってもらえないかしら?」
校長室で辞令もらって廊下に出た途端、徳川先生に頼まれた。
常勤になったからには二つ以上の部活の顧問もやらなければならない。運動部の顧問が回ってきたら大変だと覚悟はしていた。運動部の顧問は休みがないしねえ。
「はい、承知しましたあ!」
二つ返事で引き受ける。
なんたってポリコウの女将軍と噂の徳川康子先生なのだ。断ると言う選択肢は無い。
それに、主顧問ということになれば、もう一つ運動部の口が回ってきても副顧問なのでお気楽なんだ。
いそいそと体育準備室の机を整えていると、先輩の先生の声が掛かった。
「安倍先生、調理研の生徒が来てます」
「はい、ただいまあ」
額の汗を拭って準備室の外へ……出てみて驚いた。
二年B組の要海、野々村、藤本、そしてケロケロから頼まれていた魔法少女の渡辺真智香の四人だ!
「徳川先生から、安倍先生が顧問になったと聞いて、ご挨拶に参りました」
「なんだ、B組のお馴染みばっかじゃない」
「はい、よろしくお願いします」
四人揃って頭を下げる。
「あんたらが作ったのかい、調理研?」
「「「「はい、乙女のたしなみです!」」」」
プハハハハ
声が揃ったと思ったら、四人とも噴き出して、つられて笑ってしまう。
「実は……」
そう切り出した渡辺真智香の創部理由がふるっていた。
ひょんなことで、仲良し三人組に真智香が加わって、四人でお弁当を食べたいのだが、真智香以外は料理が苦手。そこで、三人揃ってお弁当を作れるように練習しようということになり、徳川先生の一言で調理研究部が立ち上がってしまったということだ。
「きっかけなんて、なんでもいいじゃん。友だち同士にしろ部活にしろアグレッシブにやるのはいいことだし」
「つきましては、創部会をやりますんで、放課後、調理室に来ていただけますか?」
「うん、ベタ付きはできないけど、行かせてもらうわ」
「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」
四人を見送って席に戻ると、机に手紙が置いてあった。
開いてみると真智香からだ。いつの間に……と思ったが、真智香の正体からするとなんでもないことなんだろう。
便箋は白紙……と思ったら、身の丈十センチほどの真智香が現れた。
「ケルベロスから聞きました、先生には分かっているんですね、わたしが魔法少女だということが。わたしは休養の為に渡辺真智香として復活しました。普通に高校生をやっていくつもりですので、魔法少女だということは秘密ということでよろしくお願いします。では、調理室でお待ちしております。失礼しました」
ペコリとお辞儀をすると、真智香は薄紫の花に変わった。
え、この花は……?
花に変わったことは驚かないが、花とか植物には疎い女なのだ、意味が分からない。
すると、封筒からノソノソと消しゴムほどの大きさのケロケロが出てきた。
「ま、ときどき空回りする奴ですが、よろしくお願いしますよ。あ、その花はビオラと申します、和名は三色すみれ、花言葉は……よかったらググってみてください。それから、わたしはケルベロスですのでよろしく」
ケロケロもペコリと頭を下げて封筒の中に戻っていった。
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