北斗の拳/TVアニメシリーズ

 かなり面白い。

 教養として履修しておこうぐらいの気持ちで見始めたのだが、期待以上の作品。いきあたりばったりに物語を連ねていったと聞くが、そういうやり方でここまで凄いものになるとは。


 欠点は多々ある。

 初期のビジュアルの粗さ。

 シンと闘うまでの無駄な引き伸ばし。

 キーとなるはずのユリアの魅力がイマイチ描ききれていないところ。

 そして、昔のアニメ特有の過去を振り返る総集編の多さ。これは苦痛になるレベルで多く、重大な欠陥である。特に、最終回を総集編にした感性は理解できない。


 しかし、『北斗の拳』にはそれらを吹き飛ばす魅力がある。その魅力の正体は何なんだろうか。

 魅力の正体は、半分はギャグ狙いであろう極端な誇張にあるのかも知れない。

 この作品世界の大柄な男は、ケンシロウの何倍もある異常な大男として描かれる。主要人物は、そんな大男のみならず、百人単位の戦士やチンピラをあっさりと片付けてしまう。岩塊を持ち上げ、足を地に叩きつけると地割れが起こる。まるでシリアスタッチのアラレちゃんである。

 ギャグ狙いの荒唐無稽といってもいい物語だが、だからこそそれを突き抜けることで、途中から神話的な趣を纏いはじめる。主要登場人物の幾人かは、世俗の悪党や正義漢ではなく神話の中の神のようでさえある。

 神々の生き様や死に様は、我々には手の届かない高みにあり、参考にも指針にもならない。

 我々にはただ神々の行いを目の当たりにし、そして圧倒されるのみだ。

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