或偏愛狂の独白
或偏愛狂の独白
貴方のことが好きすぎてずっと見ていたい。
貴方の瞳も耳も鼻も全てが好き。さらりとした黒髪、男の人には不似合いな白い肌も全部。
なのに貴方は私の想いに気づいてくれない! こんなに貴方のことが好きなのに! どうして貴方は私の想いに気がつかないの?
そう……、きっと貴方には私のことなんか見えていない。私はずっと貴方の傍にいたのに。貴方がいつどこで誰と何をしていたのか全部私は知っていたのに。どうして貴方は私に気がつかないの? 小さい頃から一緒だったよね? 何をするのも一緒。同じ幼稚園に通って同じ小学校に通って同じ中学校に通って、高校まで一緒だったのに。私たち幼馴染なのに。
ああ貴方のことが好きすぎて狂いそうなの。
何度でも言うわ。愛してるって。けど貴方を前にしたら私は言葉が詰まってしまう。貴方と話す時、私は貴方と目を合わせられない。顔が真っ赤になって熱くなってしまう。
けど私は貴方のことが世界で一番好き。何人か私に言い寄ってきた男がいたけれど、私は貴方しか見ていない。憂鬱そうに教室の外を見つめる貴方、男友達と昼食を食べる貴方、帰り道を独りで歩く貴方、貴方の全部を見ているわ。
貴方に話しかけてきた女がいた。貴方は嬉しそうだった。どうして? 私と話している時は退屈そうなのに。どうしてあの女と話している時はあんなに嬉しそうなの?
私は嫉妬した。恋い焦がれていた心が張り裂けそうなくらいに。私には貴方が他の人と話しているだけでも耐え難かった。
そして私はあの地獄のような場面を見たの! あの悪夢のような瞬間を私は一生涯忘れない。夕映えのせいか、屋上でのあの場面はまるで血で赤々と染まっているように見えた。屋上に上がっていく貴方を追いかけて扉の隙間から見えたその景色は私には地獄だった。愛しい貴方が憎らしいあの女と接吻しているーーーー。
ああ、私は叫びたかった。なんて残酷な光景であろうか! 世界がひっくり返った。今まで私は貴方のことをずっと傍で見ていたの。ずっとずっと近くで見ていたのに! 貴方はそんな私に気づかないばかりか、こんな残酷な仕打ちを……。
どうして、どうして貴方は私に気づいてくれないの? なんで、なんで……。
ああ、そうか。あの女のせい……。
あの女がいなければ……。
そして私はあの女を殺した。血溜まりの中でうつ伏せに倒れ込むあの女。貴方はすぐに駆け寄ってきてあの女の体を揺さぶる。ああ、これで、これで貴方は私のもの! もう誰にも渡さない!
でも貴方は私に目もくれないでどこかへ走り去ってしまった。これで貴方は私のものになると想っていたのに。
まるで私のことが見えていないみたい……。
ああ、そうか。
私は貴方には見えていないのだ。
だって私はもう死んでるから……。
だから貴方はずっと私のことを見てくれなかったんだ。
私はもう死んでいるから……。
ハハハハハ────!
そう、私はもう死んでいる。だったら貴方も殺してあげるわ! そうすれば一緒よ!
だから死んで頂戴! 愛しい貴方よ、私の為に死んで頂戴!
アハハハハハハ────!
終
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます