青春と坂道
青春と坂道
僕は風を切る。自転車に跨がって。日はもう高く昇っている。雲一つない快晴で、ぽかぽかと気持ちの良い小春日和だ。
長くて急な坂道を駆け下り、住宅地を抜けて、僕は坂の下にある古い書店に向かっていた。あの店を切り盛りするお姉さんはとても綺麗な人で、学生である僕は何か口実を見つけては、いつもお姉さんに会いに行っていた。お姉さんはやはり優しい人で、親切に言葉をかけてくれる。
「学生さんですか? 勉強頑張ってくださいね」
その優しさとお姉さんの容姿に僕は恋をした。
今日は午前中に授業が終わり、昼からまたあのお姉さんに会える。そう思うと僕の心は弾んだ。
学校帰りの僕は自転車の前籠に鞄を入れて、坂道を慌ただしく下りながら、頬に暖かな風を感じていた。
あと数百メートルで書店だ。坂道である僕は転ばないように細心の注意を払いながらも、なるべく早く着くようにスピードを上げた。
僕は風を切って、坂道を下る。
風を切って。風を切って。
そしてついに僕は、坂の下の書店に着いた。自転車を止め、鍵をかけることも忘れるくらい夢中で僕は書店に入った。
お姉さんはいつものように優しい笑顔を僕に向けて、「いらっしゃい」と一言声をかけてくれた。
終
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