第7話 2人の食道事情
2人は常に無重力にしてある。
無重力だと筋力が落ちるとか以前に、筋肉もなければ自重で骨折しそうなほど身体が弱っているからだ。
今は後のリハビリなんか考えないで、栄養ある物をほどよく食べさせて回復に務めないと。
ボクにはふたつの収納能力がある。
中の時間が止まっていて生物が入れないストレージ。
生物を入れられ時間の流れがある影空間。
介護している2人は生きているので、当然垢も出るし食べているので出る物も出る。
つまり2人は無重力の中を運ばれて下半身を影空間に沈める。
事が済んだら洗われ拭かれる。
体が弱ってるっていうのに、拍動を速めて顔を赤くして睨みつけてくる2人。
「自分で動けるようになるまで、これがずっと続くんだから。恥ずかしがってちゃ体力の消耗が激しくなるだけだよ」
まだまだ介護初日なんだから、早目の回復のためにも体力の消耗は避けてもらいたい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
毎日の食事は3人分が宿から提供されている。
それを科学魔法で栄養素を単分子化、追加したい栄養素も混ぜた特性流動食を飲ませている。
極細のホースみたいな物、カテーテルを使って胃に直接送り込んでいる。
まだ喉に飲み込む力が戻ってないから、口から飲ませたんじゃ気管に詰まって死んでしまう可能性があるからね。
カテーテルは肺に入らないように、科学魔法のエコーで位置を確認しているので安心だ。
体験した事を学習し、それを組み合わせているうちに統合されたのが科学魔法。
熱と大気でドライヤーとかは、かなり初期に思いついた。
だけど元になる能力がないなら、そっち方面はお手上げってのがある。
テレパシーだ。
だからボクには、2人が何を思って介護されているのかがわからない。
わからないから、不安になってしまう。
誰しも普通に生きていられたなら、死にたいだなんて思わない。
だけと不幸に遭遇してしまったら?
辛い目に合わされ続けていたら?
いつしか、死にたいと思うようになるかもしれない。
だけどボクは1度前世で死んで、首が折れながら頭蓋骨が脳に刺さる感覚まで覚えている。
あれを覚えているからこそ、人の何倍も死を恐れているんだと思う。
だから見殺しにしたくないし、死なせたくないと思っている。
2人がどう思っているかはわからないけど、ボクの自己満足のために回復してもらうからね!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あれから1月が経ち、宿を出ていく朝になった。
2人はすっかり年頃の健康な肉体を取り戻していて、両側からボクに腕を絡めて笑顔でいる。
宿の受付から続いている食堂からは。
「百合百合しい」
「尊い」
「3人共嫁にしたい」
そんな頭の悪い声が聞こえてくる。
どうしてこうも、懐かれたかなぁ〜。
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