第5話 罪とお金と商館と

 最初に盗賊を退けてから30日。

 合計4回、70人以上の盗賊を影の中に閉じ込めている。

 しかも毎回、女の子かオジさんの娘扱い。

 解せぬ。

 今もオジさんの家のある町に来たけど、町に入る取り調べの列で、アラ可愛い女の子だこと、とか言われる。


 門番の兵士さんに盗賊の扱いとかどうするか聞いてみたけど、オジさんと同じ答えで。

 取り調べをした後、重罪なら死刑で、重罪でなければ犯罪奴隷として売却されるらしい。

 理由の如何に関わらず、盗賊なら終身犯罪奴隷らしい。


 飢饉で食べるために仕方なく盗賊になったり、村とか町が国から見捨てられて盗賊になった場合は?

 生きるために、死にたくないからと誰かから奪ってでもと罪を犯す人もいるだろう。

 犯罪は裁かれるべきだが、民が罪を犯さなくてもいい国造りや政策は?

 情状酌量とかないらしい。

 なまじ前世の記憶と知識があるから、そんな事を考えてモヤモヤしてしまった。


「可憐だ」

「悩める乙女だ」


 周囲からは見る目のない人達が、見当違いの事を言っている。

 ボクは門でオジさんと別れ、兵士さんと一緒に奴隷商館に向かった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 影から牢屋の中に1人ずつ盗賊を出しては、兵士さんが水晶球で犯罪歴を調べていく。

 盗賊1人あたりの報奨金70余名分と1人の賞金、犯罪奴隷として売った金額が合わせて金貨7枚にもなった。


 銅貨   100円

 大銅貨  1千円

 銀貨   1万円

 大銀貨  10万円

 金貨   100万円

 大金貨  1千万円

 白金貨  10億円


 日本円にすると大体このくらいの価値になる。

 3回目に回収した盗賊に、かなりの賞金首が居たそうだ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「では、私共は職務に戻ります。ご協力、ありがとうございました」


 一礼して兵士2人は去っていった。


「では、ボクもこれで」

「ああ、お客様、少々よろしいですか?」

「はい? なんですか?」

「実は買い手がつかず、近日中に処分が決定しそうな奴隷がおりまして。よろしければ、ひと目見ては頂けないでしょうか」

「うっ……」


 またなんて断りにくい文句で誘ってくれるんだ。

 人権とか人命がお金になる世界なのは実感したばかりだけどさ、見ない聞かないで知らないフリしていられれば良かったんだけどな……

 だからといってここで断るのも、ボクが人でなしみたいで断り辛いなぁ。

 えっ? 盗賊の一部を潰して不能にしたのは人でなしじゃないのかって?

 ボクを女に間違えるような、目と心の腐った犯罪者に容赦は必要ない!!!!!!!!!!


「わかりました、見させて貰います。でも、ちょっとだけですよ? ほんなのちょっと」

「ええ、それで構いません。彼等彼女等の命が助かるなら、例え赤字になったとしてもワタクシは構いませんっ!!」


 この人、こんな商売してるから、どんな悪人なのかなって思ってたけど、優しい人なんだな。

 商館のオーナーに案内されて、廃棄処分予定の奴隷が閉じ込められている階層の檻に向かった。

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