第3話 同い年トリオで普通でマトモなのはボクだけ

 翌朝。

 両親と長男夫婦、それと兄弟達からとても心配された。


「ミゲル、昨日は起きてこなかったけど大丈夫だった? 疲れてない? 玉の肌に傷とかついて跡が残ってない?」

「ミゲルちゃん、お嫁に行くまでは体を大事にしなきゃダメよ」

「だからなんで、みんなボクを女の子扱いするの! ボクは男だって知ってるでしょ!!」


「だって、ねえ? お義母さん」

「ええ、そうよね」

『村のどんな子よりも、美少女にしか見えないんだもの』


「はぁ〜、よくない、よくなけど、もういいよ。何度言っても無駄だし」


 ボクの性別攻防戦も終わりにして、今日からは体験学習と学習して会得した能力について検証しないと。

【話術】を学習しました。

【早食い】を学習しました。

【食い溜め】を学習しました。

 早く検証結果を出さないと、どんどん能力が増えて言ってしまいそう。


 歩いている間にも【呼吸法】や【歩法】、【日焼け防止】等を多数学習していた。

 正直、もう既に把握し切れていない。

【聴音】を学習しました。

【気配感知】を学習しました。

 また新しく学習したと思ったら、後ろからお尻を揉まれた。

 こんな事をするのは、1人しかいない。


「この変態!」


 振り向きざま、相手の股間を全力で蹴り上げる。

【蹴り】を学習しました。

 変態はボクの蹴りをバックステップで回避すると、両手を伸ばして胸を触ろうとしてきた。

【バックステップ】を学習しました。

 いやらしい笑みを浮かべた同い年の少年は、顎を蹴り上げられて気絶した。

【疲労軽減】を学習しました。


 この子の名前はリック。

 村の同い年トリオの1人で、もう1人の女の子の裸が見たいがために、冬でも川遊びに誘う真正のスケベだ。

 なお、俺ミゲル相手だったら男でもイケる!

 なんて宣言する真正の変態でもある。


「もう。またこの変態は、男相手にも手を出そうとしているのね。わ、私を狙えばいいじゃないの」


 ボクが回想にふけっている間にやって来たのは、同い年トリオ最後の1人のミリー。

 赤目赤毛のポニーテールで、宿屋の看板娘でもある。

 もっとも宿屋と言っても、たまの行商人くらいしか村に来ないので、基本は家族で畑仕事をしている。

 ミリーは見ての通りにリックが好きだがツンデレだ。

 既にツン1デレ9なので、村では2人が何歳で結婚するのかが賭けられていたりする。

 なお、気絶しているリックに覆い被さって、口内を舌で蹂躙している瞳からは、ハイライトが消えている。

 まあ……そういう子だ。


 こうしている間にも【男色】【変態】【ツンデレ】【ヤンデレ】【暗殺術】等を学習していく。

 暗殺術!?

 気絶や寝込みを襲うのは、暗殺にあたるらしい。

 しかしそうか、リックはネタじゃなくて本気でボクでもオッケーだったんだー……


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ボクが遠くを眺めながら現実逃避していると、いつの間にか2人は消えていた。

【現実逃避】を学習しました。

【運搬】を学習しました。

 ミリーがリックを引きずって行ったんだろう。

 地面に擦れた跡があるから。


 今は子供だから手足も細いけど、将来はきっと世紀末の覇者とか、都市狩人の鷹みたいに巌のような漢になるはずなんだ。

 だから早く体験学習について検証を終わらせて、格好いい冒険者になるために体と技を鍛えなくちゃ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る