第2話 生まれてから1度も女装なんてした経験はないんですけど!!
ボクは開拓村の農家の末っ子ミゲル。
切り揃えられた短めの金髪に碧眼の、華奢で可憐な美少女にしか見えないと、みんなは言うけどどう見ても男だ。
今年で数えで10歳になるので、この春に神からの祝福として、特殊能力を得る可能性がある。
ただその確率が余りにも少ないため、ボクは全く意識しておらず忘れてさえいた。
村では現在9歳の少年少女が必死に願う中、ボクだけは15になる年の春に旅立つ事に思いを馳せていた。
家は既に長男が結婚して継いでいるので、長男より下の子供は男なら独り立ち、女なら独り立ちか嫁に出るしかない。
なぜかボクには嫁入りが勧められているけど、ボクは冒険者になるつもりで毎日の仕事のあとに木の枝で素振りをしている。
今日も仕事が終わったので、これから家の裏で素振りをする予定だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そろそろ家の前に到着しようとしていた時、不意に視界が広くなったような錯覚を覚えた。
そして【体験学習】を得ましたって声が頭の中から聞こえてきた。
【女装】を学習しました。
同時にボクが前世では中学生で、バスで向かった陶芸の体験学習の際に事故で死んでしまった事まで思い出した。
【重力】を学習しました
クラスに何人かはいる、頭の中が子供のままの生徒が走り回り。
【大気】を学習しました。
当時のボクの背中にぶつかった。
【光】を学習しました。
そして運悪く、踏み出した先に落ちていた粘土で足を滑らせ。
【音】を学習しました。
かなりの勢いで頭から床に。
【死】を学習しました。
ボクの記憶はそこで途切れている。
【大地】を学習しました。
それからボクはこの世界で生まれて、今日まで生きてきた。
【生】を学習しました。
記憶を取り戻した事で輪廻かどうかはわからないけど、転生って奴をしたんだと思う。
【転生】を学習しました。
でも前世の人格が蘇った感じはしない。
【熱】を学習しました。
今もボクはこの世界で生まれたミゲルのままだ。
【】を学習しました。
【】を学習しました。
【】を学習しました。
【】を学習しました。
【】を学習しました。
【】を学習しました。
そしてボクは、思い出した記憶と会得した能力の多さが負担となって、部屋に着くなりベッドに倒れ込んでしまった。
この日の記憶はそこまでしかなかったけど、ひとつだけ強く思った事がある。
ボクは生まれてから1度たりとも、女装なんてした経験はないんですけど!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。