美少女少年の体験学習記
天神 運徳
第1話 どこからどう見てもボクは男!
馴染みの商人であるワシの馬車に乗せてやり、今年で成人の15歳になるミゲルは村を出た。
旅に必要な最低限の荷物だけを背嚢に詰めて、長袖長ズボンの服装で御者台に座る。
短く切り揃えられた金髪は風になびき、柔らかな微笑を浮かべた美貌と、細められた碧眼からは彼が少年だとは到底思えない。
5年の短くない付き合いだが、ワシはミゲルを見るたびに、コイツは生まれる性別を間違えてるよなと思う。
村から出て1日の距離なのに、馬車は盗賊に囲まれた。
最近大きな街で騎士や兵士の巡回が増えたと聞いた、だから仕事が出来なくなったから移動してきたのだろう。
「おい、商人! 命が惜しかったら、そのメスガキと馬車を置いて逃げな!」
「なっ、盗賊? そんな……」
「オジさん。ボクが時間を稼ぐから、オジさんは……」
ワシはそこで気付いた。
女扱いされてミゲルが怒っている事に。
「おい、ガキ! テメエはさっさと馬車から降りて裸になれや!」
それを聞いてワシは、ちょっと期待してしまった。
このままでいれば、大都市にいる美少女よりも可憐で儚く美しい少年の、脱衣シーンと裸を見れるのではないかと。
ミゲルの強さは信頼しているので、ワシは犠牲になる少女を悼むような表情を浮かべた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
背嚢を荷台に置き馬車を降りるミゲル。
馬の前まで歩くと首元のボタンを外し、長袖の裾を持って捲り上げてから脱ぎ捨てる。
頭を振って乱れた髪を直す仕草が悩ましい。
毎日外出して日に当たっているだろうに、日焼けやシミひとつないうなじの白さに、思わず唾液を飲み込む。
そのゴクリという音が合図だったかのように、馬車を囲む盗賊の股の下から石柱が生まれ、一瞬で大天幕状態だった盗賊達を色々な意味で不能した。
行動とか戦闘とか、あと男とか。
ミゲルは投げ捨てた服を再び着ながら、足元から伸ばした影の中に盗賊を吸い込んでいく。
いつの間にか盗賊、いや男殺しの石柱も消えていて、道は盗賊のでてくる前となんら変わらなかった。
「さっオジさん、早く行きましょう」
「……あっ、ああ」
隣に座る美少女少年に促され、固く握っていた手から力を抜いて手綱を振るう。
ワシの合図に馬が馬車を引き進みだすのを感じながら、やはりコイツは生まれる性別を間違えたと確信した。
あれ以上見ていたら、家に帰ってから女房が抱けるか心配でならなかった。
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