第4話 出逢い。
あたしが初めて琥太郎に出会ったのは、そして霊感体質になったのは、今から3年ほど前。
幼い頃に事故で両親を亡くし、母方のおばあちゃんに引き取られ、田舎でひっそりと過ごしていたんだけど。
そのおばあちゃんが高校を卒業した春、卒業を待っていたかのように静かに息を引き取り、まだ未成年だったあたしは、父方の親戚を頼るように言われ、おばあちゃんの遺品などを整理した後、保険金や遺産を元手に東京へと出てきた。
だけど、父は母との結婚を反対され、駆け落ちして一緒になったので、父方の親戚を頼れるわけもなく。
とりあえず、住む場所を探そうと不動産屋に行って…驚いた。
正直、東京をなめていた。
こんなに家賃が高いなんて…!
高卒で仕事も見つかってない状態で、そんな高いところには住めない。今はよくても、そのうち貯金や遺産なんてすぐに底がつく。
そういえば、昔テレビか何かで事故物件というのがあるのを見た記憶がある。
自殺者や孤独死が出た部屋にはなかなか借り手がつかないため、家賃が安くなるとかならないとか。
あたしはその記憶を頼りに、不動産屋に食い下がった。
事故物件でも女子のひとり暮らしに向かない部屋でも何でもいいです、とにかく安い部屋を!!と食い下がった結果。
一年以上住むことを条件に、敷金礼金ゼロで管理費共益費込みで家賃三万円という格安物件を紹介してもらった。格安だけど、1LDKで風呂トイレ別。駅からちょっと離れてるけど、歩けない距離ではない。
ただし、途中解約違約金は100万円というボッタクリ価格を言われたけども。
こんな好条件逃す手はないと、契約して部屋へ行くと。
部屋の隅に、男の子がちょこん、と座っていた。
…誰?
「あの…ここで何してるの? 」
男の子は物凄く驚いた顔でこちらを見た。
「お姉ちゃん、俺が見えるのか?」
これが、琥太郎との出会い。
その後妙に懐かれ居座られるも、特別何かされるわけでもなく、むしろひとりぼっちになってしまい、友達もいない環境で幽霊とはいえ話し相手ができて嬉しかった。
最初は。
なぜか、その後やたら幽霊に懐かれ、居座られ、とある事件がきっかけで探偵事務所を開くことになり。
両親を亡くした時も、おばあちゃんが亡くなった時も。
助けてくれる人や護ってくれる人がいて。
両親もおばあちゃんも、周りの大人はみんな子どもは大人が護るもんだから、っていつも言ってくれていて。
だから。
7つかそこらの子どもが、町を護る為とか、大人が自分たちの生活を守るために子どもを犠牲にするような事が、ただただ許せなくて。
もうとっくの昔に終わった事で、少女もなんとも思ってないんだし、余計なお世話なのかもしれないけど。
なんとかしてあげたい。
あたしは、頭をリセットするようにぶんぶん振って、自分の顔をピシャっと叩いた。
考えよう。
みんなが幸せになる方法を。
気合を入れ直したところに、ジリリリリン、と事務所の電話が鳴った。
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