第5話 荒れ地に花を咲かせましょう!
『先日はありがとうございました。お礼が遅くなり申し訳ありません』
電話の主は、少し前に台風被害にあい、あたしがボランティアで復旧のお手伝に行った小学校の校長先生からだった。
『いえいえ、お礼なんてそんな。大したことしてないですし』
『いえ、その節は本当にお世話になりまして。それでですね。今日お電話差し上げたのは実はお願いがありまして』
『お願い、ですか?』
『はい。台風で木や花が全て失われてしまったので、来年の春に花を咲かせれるよう、子どもたちと花の種や球根を植えようかと思いまして。入学式の日に少しでも華やかになれるように』
『それは素敵ですね。ぜひお伺いさせていただきます。日時は…はい、はい。わかりました。お誘いありがとうございます』
あたしは受話器を置くと、少し考えた。これは渡りに船とはいかないだろうか?
「どう思う?」
隣で聞き耳を立てていた幽霊陣に意見を求める。
「悪くはないやろな」
「本人の意志次第、だけどな」
「うまくいけばいいですねえ」
「きっと桜花ちゃんも喜ぶと思う」
ん? 桜花? 首を傾げたあたしに幽霊陣が教えてくれた、桜の木の幽霊の名前だよ、と。どうやらいつの間にか自己紹介し合っていたらしい。
まあ、でもちょっと希望が見えてきたな。
とりあえず、明日桜の木へもう一度行ってみよう。
あたしはよしっ、と気合を入れると、事務所の看板ドアプレートを『close』に変えた。
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