第14話 研究室
「せんせー」
「教授と呼びなさい」
「せんせーって何でこの研究してるんですかー」
「……質問の意図が分からないのだが」
「ぶっちゃけ日の目も見える感じしないし、お金が儲かるわけでもないし、ていうか地味だしー」
「その類いの話は聞き飽きたよ。良いかい、研究と言うのは儲かるから行うわけでも、目立ちたいと自己欲求を満たすために行うわけでもなく、」
「でもそのせいで給料無くてお嫁さんに捨てられたんすよね」
「…………」
「一年一緒に研究したから分かるっすけど、ぶっちゃけねえ? ていうかー、せんせーのその無愛想で口下手なのも悪いと思うわけなんですよ」
「それが原因であいつは出て行ったわけでは……」
「いや、研究発表会でみんなが寝る理由っすけど」
「…………」
「気にしてんすねぇ……」
「ばッ! ……んっ! んッ! くだらないことを言う暇があるならデータでもまとめたらどうだ」
「手もちゃんと動かしてまーす。機械音痴のせんせーとは違うもんでー」
「…………」
「ほらー、来年になったらあたしも出て行くわけじゃないっすか。今、地味に就活も忙しいわけですし」
「……悪かったな。就活で役に立ちそうにない研究室で」
「あははー、そんなもん多少は影響受けてるっすけど、別にそれで落ちたとこがここのせいとかありえないんでー」
「受けては、いるのか」
「結構聞かれるわけですよ? どうしてこんな地味な研究を選んだんですかー? って、あはは、こんな呼ばわり、う、け、る!」
「……今からでも、研究室の変更を外の教授に申請して、」
「えー、嫌っすけど? 何馬鹿言ってんすか、だからハゲるんすよ」
「ハゲてはいない!!」
「ムキになるってことはどこかヤバイんすか」
「そっ! んんッッ!」
「人が好きでやっている研究をこんな呼ばわりする面接官とかまじないっすよねー。その手の言い方してきたとこ全部その場でキレて帰ってやりましたよ」
「…………うん?」
「はい?」
「……え、いや、君は……その、この研究が好きなのかい?」
「はい? 好きじゃないのに研究するわけないじゃないっすか」
「そうか……、そ、そうか……。では、このまま研究を続けるというのは!」
「ないっすねー」
「あ、そうか……」
「ちゃんと稼いでせんせーを養わないといけないっすしね」
「は?」
「おっし! データ完成っすー! それじゃあバイトがあるんでー!」
「待ッ! え、ちょっと待ちなさ、え、え!?」
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