第2話 「ありがとうの意味」
第2話 「ありがとうの意味」
有栖川 小豆(ありすがわ あずき)
ショートカットでツリ目、やや強気。葉澄と仲良しで時折意地悪したいと思っている。
天花寺 葉澄(てんげいじ はすみ)
黒髪ロングの似合う美人。小豆以外の人とあまり仲良くしようとしない。小豆と同じクラス。
ー2人は付き合っているー
あの日から数週間が経った。
けれどあの時言われた「ありがとう。」の意味が全く分かっていないままだ。私は毎日その事について悩んでいる。葉澄に聞いたところで、「気づいて欲しいから……教えない。」それを言われて話が変わってしまう。私はその事について考えて、席で頭を抱えて寝ているふりをしていた。今日は早起きだっので、1番に教室に来ていた。1人寂しい教室を顔を上げて見回す。シンと静まり返った教室で私は大きくため息をついた。それと同時に、教室のドアが開いた。「小豆ちゃん……おはよう。今日は早いね。」葉澄だった。
「うん……今日は早起きだったんだよね……おかげで眠くって……」そう言って私はあくびをした。
理由は多分あれだ。夢のせいだ。もちろんあのことを考えているから、と言うのもある。けれど最近よく分からない夢を見る。雪の中、受験票を持って合格発表を待っている夢を見ていた。その隣には女の子がいて、2人で何か話していた。私は過去にそんなことがあったような気がしていたので、受験の日の事を思い出していた。けれど全然思い出せない。
その夢を思い出しながら、私はまたため息をついた。すると、どんどん教室に他の生徒が入ってくる。それを見た葉澄は自分の席へと戻って、教科書を引き出しに入れていた。
1時間目
私はずっと夢のことを考えていた。なぜあの夢ばかり見ているのか。
2時間目
また考えていた。しかし全く思い出せない。
3時間目
またもや考える。何となく思い出せてきた……気がする。
4時間目
隣の女の子の容姿が思い出せてきた。あともう少し……。
お昼
ずっと同じ事を考えていたので、なんだか疲れた。私は葉澄と一緒に食べることにして、購買で買った焼きそばパンを頬張っていた。「小豆ちゃん……なんだか今日元気ないね……。」(…………いやアンタのせいだよ!)思わず声に出そうになってしまった。
「そう?心配かけてたらごめん……葉澄に言われた言葉、まだちょっと気になってて……」そう言って口の中の焼きそばパンを飲み込む。(やばい……喉につまった...)
私は胸の当たりをトントンした。その様子を見ていた葉澄が「だ、大丈夫!?ほら、そこにあるいちごミルク飲んで!」そう言って葉澄は私にいちごミルクを差し出した。私は思いっきりストローからいちごミルクを飲んだ。「ありがとう。」それだけ言って私は葉澄に微笑む。「小豆〜!環境委員の仕事行こ〜!」ドアの方を見ると同じ委員会に入っている霧島 糸(きりしま いと)が居た。「ん〜…?今行く...」(そういえばお昼に集まって花壇の整備するって言ってたっけ……)私は葉澄にその事を伝えて、教室を出た。 「ごめん糸、めっちゃ忘れてた!」私は顔の前で手を合わせて糸に謝った。「だと思った。呼んで良かったわ」笑いながら糸はそう言った。糸と私は同じ中学校で結構仲が良かった。
「ねぇ糸……最近よくわかんない夢見るんだけどどう思う?」私はそう言って、悩んでいる事を話した。「うーん……よくわかんないけど、その夢と葉澄ちゃん?って言う子は何か関係してそうだね。じゃなきゃそんなこと言わないでしょ。受験の日とかに、誰か助けたとか無いの?」そんなことを言われて私は受験の日の事を思い出す。しかし助けたと言うなら、葉澄とは全く違う子の姿が思い浮かんだ。(葉澄みたいに美人な子だったら絶対覚えてるはずなんだよな……)そして私はしばらく黙って委員会の仕事を終わらせた。
そしてその日は終わってしまった...。
「ぅー...」私はお風呂に入った後、ベッドにダイブして顔を枕に埋めた。足をバタバタさせてそのまま受験の日の事を思い出す。
ー2月、受験当日ー
私は学校に向かうため、電車に揺られていた。すると、ある光景が視界に映る。
(痴漢だ……)私は必死にその子の元へと向かい、ある程度が痴漢見える距離で、写真を撮った。
そして触っている犯人の手を取り、「この人、痴漢でーす。」
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