御守り、その役目
先日、二人で神社へお参りに向かった。目的は、危ない仕事をしている彼の、無事を祈るためであった。
けれど、巫からすれば、二人はまるで、逢引をしているように見えたのだった。
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「タカネ様、受け取っていただけますか…?」
そっと差し出されたかわいらしい刺繍の入ったお守り。
きっかけは巫に勧められたからというのは見ていたけれど、恋愛成就のお守りを好いている相手から貰ってしまった。
気持ちが盛り上がったのは言うまでもない。同じのを返してもよかった…。でも、彼女にとって『今』神様にお願いしてでも、叶えていたいことは彼の『無事』。『健康で過ごせること』、それだった。
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もうあの約束をしてから、随分と長い時がたった。約束と言っても、ほとんど一方的に押し付けたものだから、忘れていても仕方の無いこと。
御守りを受け取った時に思い知った。
彼女は御守りをそっと見つめてから、夜空に浮かぶ満月に視線を移した。
「私の恋愛は、貴方次第ですのよ…みーくん」
今日も彼はどこかでお仕事をしているのだろうか。ちゃんとご飯は食べているだろうか。寒い思いをしていないだろうか。
考えたらキリがない。最近はそればかり。逢えてしまったから、考えざるを得ない。
今までだって考えないことは無かったのに、今はもう、そばにいたくて仕方ない。
手の届く所にいるのなら、手を伸ばしたい。
でも、彼にもし、想い人がいたら…私は邪魔にしかならない、わね。
彼女は大切なその御守りを、そっと手で包んだ。
「御守りさん。もし、みーくん…カスミくんに、好きな人がいるのなら、その人とどうか幸せにさせてあげてくださいな。彼には、もっと温もりが……必要だと思うの」
彼女の願いは果たして、届くのか。
お守りは月明かりに照らされ、そのピンク色の刺繍を煌めかせた。彼女はお守りを大切に箱にしまい、寝具に向かった。
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