第3話 好きな人の挙動は全部スペシウム光線
ぼくはしんだ。
てんしのほほえみというふじょうのそんざいをやきころすみわざをもって。
そう、天使の微笑みを受けた瞬間、僕は思考回路が焼き融けていくのを感じた。あの時から僕は恋の奴隷なってしまいましたというやつである。
彼女の微笑みの前では、僕は思考することを許されない。邪な想いを抱くことも許されはしない。
では何をするのか。
ひたすら可愛いを連呼するのだ。
え、可愛い。なにそれ可愛い。可愛いは正義だし、もはや可愛ければ悪でもいいんじゃないか。え、可愛い。可愛すぎて死にそう。でも死んだら可愛い彼女が見れなくなるから死ねない。とりあえず可愛い。
もうこんな感じである。もちろん、頭の中でしか言っていない。これを口に出してしまったら、天使に一発で嫌われるのは間違いない。そうなったら、もはや生きる意味がない。そんな人生に価値などありはしない。
そんなこんなでその日は終わった。
そして一か月近くが経った。
その間僕は何をしていたのか。
ひたすらに悶えていた。
彼女に何とかして近づきたい。どんな手を使ってでも近づきたい。でも近づき方がわからない。下手に近づいて嫌われるのも怖い。
八方塞がり、打つ手なし。
彼女のことを遠くから見ては、彼女と話す男にめらめらとこころの奥底で燃え上がるどす黒い嫉妬をぶつけ、だが物怖じせずに彼女と話せるそいつを憧れと憧憬の目を向け、明日こそは彼女と話すぞと、すべてを明日の自分にまかせて家に帰る。
欲求と欲求がぶつかり合う日々。そんな何の生産性もない日々が一か月近くつづいたある日、ついに僕は行動を起こした。
クラスのグループラインから彼女を含む何人かを友達に追加したのだ。
あのドキドキは今でもよく覚えている。
彼女のアイコンをタッチし、友達追加のボタンを押すか否か。ただ画面をタッチするだけの動作であるのに百メートル先の小さいどころかもはや見えないバスケットゴールを狙うかのようなそんな重圧を指先に感じた。ただ画面を打つだけなのに。
そして追加したその瞬間、ついに彼女とつながることができたという喜びと、これでもしも彼女に嫌われてしまったらどうしようかという、充足感と不安が綯交ぜになったかのようなそんな気持ちが僕の心の中を泳いだ。
そして僕はこう彼女に宛てて打ち込んだ。
未読スルーとか多めですが、温かい目で見守ってやってください。
返信は翌日、
え、性格悪い!
僕は死んだ。
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