第2話 底なし沼は落ちてみないとわからない

そんなこんなで僕はおそらくこの先の人生で三本の指には入ってくると思われる、いや入ることに疑いはない恋をしました。


俗にいう‘‘一目惚れ‘‘というやつですね。


彼女を見た瞬間、僕は恋に落ちるということの本当の意味が分かりました。視線を外そうと思っても外すことができない。そこに何かの引力が存在するかのような、そんな気分で彼女を僕は見つめていました。


恋とは意識して何とかなるものではない。


落ちるときは本当に落ちるし、落ちた後に抜け出そうと思ってもそれはできない。もしできたという人がいたら、教えてほしい。抜け方を教えてほしい。もれなくの焼肉が付いてくる。デザートもついてくる。でもあんまり高いのはやめてほしい。干からびてしまう。


話がわき道に逸れすぎました。戻しましょう。


僕の目が彼女を映すと同時に僕はもうそこから、つまり彼女が存在する空間から目を離すことができなくなった。吸い込まれたかのように。


こんなにかわいい人がこの世に存在するのか。

いやもはやこれは人ではない。


天使か。


これが神話や古来の人の話に聞く

天使という生き物なのか

イデアとはかくも近き場所にあったのですね、プラトン大先生よ。



心の中でそんなことを思いながら、僕は彼女から目を離すことはできなかった。


僕の視界の中で彼女だけが色を持って動いていた。彼女の周りのものはすべて色を失った何かに見えた。その時の僕には世界のすべてが彼女ただ一人で作られているかのように見えた。世界には彼女以外が存在しなかった。


そしてそんな世界が動きを見せた。


それまで周りのことなど気にする様子もなく、机に何かついていたのだろうか、顔を下に向けていた彼女はふと顔を上げると、熱烈に熱い視線、もはや光線といっても過言ではない、を送る僕という変態の存在に気づき、そんな救いようもない醜い視線を向けて天使を汚そうとしている矮小な存在に向けて、




微笑んだ。





僕は死んだ。



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