第59話 僕の居場所が少し変わった
母親との会話から数日が立ち、放課後、僕はいつものように屋上にいた。外のことばかり考えすぎて……いや記憶をなくしたということで周りが優しくしてくれていたということもあったんじゃないかなとも思う。そういうことに気づくこともなく外に目を向けてしまったんだろう。そういえば父親はまだ僕と会話はしていない。母親によればまだ心の準備がついていないと言うことらしい。まあ焦らずに行けばいいなと僕は思っている。人の関係って焦っても仕方ないかなとも思えてきたから。
それが終われば。そう……僕はやっと記憶をなくしてから片付けなければいけないと考えていたこと、気づいたことが終わるんだなって……
ああ、勉強についてはゆっくりしていくよ。もうはっきり言って難関過ぎてゆっくりいかないと無理だから。
そんな事を考えていると
「いつまでひとり浸ってんだよ。カッコつけちゃって」
と声がかかってきた。主は榊原弟。この前まではひとり考えをまとめる場所として使ってきた屋上であった。……けれど、今の声がかかったそんな状況からわかると思うが今はひとりで過ごす場所には程遠い場所となってしまった。
「広斗。坂井くんの邪魔をしちゃ駄目ですよ? 」
そんなちょっと起こった顔で榊原弟に注意するのは榊原先輩。榊原先輩は僕が屋上にいることがわかってからいつも顔を出すようになっていた。榊原弟はまあ怪我の付き添いなわけだけれど多分それがなくなっても榊原先輩が来る限りやっては来るだろうなと思っている。そして榊原弟の横で無言でちらっちらっと榊原先輩を眺めている人がいる。なんだよ、いつもと態度がぜんぜん違うじゃんかと思える様子でここにいるのは金沢。榊原先輩のことが気になっている人物だね。こいつもここに来るようになった。でもおとなしいんだよね。まあそんな感じなので気にならないから別にいいかと思っている僕がいる。
そして……もうひとり。
仕事がないときはやってくるようになった。またこの人も静かに榊原弟からちょっと離れた場所から榊原弟をちらっちらっと眺めている人物、佐竹。
なんだか屋上に人が集まってきていて最初の頃とは大違いな場所となってしまったなあと僕は少し面倒くささも感じてはいたがまあいいかと少し諦め気味に思っていた。
ちなみにまだいるんです。そろそろ声が聞こえてきそうな時間になったなあと思っていると
「私が行くから戻っていてください」
「ううん。あなたは来なくていいから。私は坂井くんに会いたいんだから」
ああ、いつものやり取りしながらやってきてるよと僕は面倒くささを感じながらその会話を聞いていた。
「あのふたりもいつもよくやるよな」
その会話を聞いていたのだろう榊原弟もそうつぶやいていた。そして
「風間さんも大変ですね。付きまとわれて……」
榊原先輩もそんな言葉をつぶやいてしまう。
屋上の玄関が空きやってきたのは風間先輩と白石先輩。白石先輩は僕と風間先輩を会わせたくないといつもこんなやり取りをして止めようとしていた。ただ、風間先輩は気にもせずいつも押し切ってやってくる。
「みんなおつかれーー。ごめんね。ひとりうるさいのがついてきちゃってて」
といつものようにそんな言葉を僕らに向けて告げてくる。すると白石先輩は不機嫌そうな顔で
「またいるのか。坂井は。さっさと帰れ」
といつものようになぜか僕にだけそう注意してくるのだった。
ああ……面倒くさい
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