第57話 思いもつかなかったこと
放課後、僕はいつものように屋上で過ごすのをやめ今日は即座に家に帰ることにした。というのも、風間先輩との話から落ち着いたということ、そしていろいろとひとり考えることよりもまずは大事な人と話すことが必要だと思ったからだ。
屋上に行かないことについては風間先輩には会話のときに伝えておいたし、放課後に榊原弟が声をかけてきたので伝えておいた。まあ、榊原弟から「珍しいな、お前が」なんて言われたけれどね。
今回の件で思ったのが僕は「人ではなく場所」の事ばかり考えていたんだって思った。でも過ごす場所も大事だけれど自分や人のことも大事なんだって……勝手に僕は前の僕、今の僕って分けて考えてしまっていた。わからないから……自然と。でも周りはどう思っているんだろうって今頃そんな事を考えられた。
はははっそんなことにも気づかない僕。
何が大切か……わかっていなかったんだろうなって。でも病院に入院中や家にいるときは学校や生活する上の周囲の人のことなんて全然わかんなかったわけで。
家族と病院で少し面識のある人だけ。それだけじゃ人のことなんて考えないだろうなって、いや安心できる人としか付き合いがない中ではそんなに考えが及ばなかった。となると思いつく場所だけになってしまう。そんな流れが僕に大事なことを忘れさせてしまっていた要因にも繋がっているかもしれないね。
固定観念……ってやつ?
ふむ、よくわからんな。そういうのは……はははっ。
まあ、とりあえずはまずはいちばん大事な人と話す必要があるって思ったんだ。誰ってそりゃ母さんだ。今まで僕を大事に見てくれていた人。そんな母さんが泣いていたこと。なぜか? ちゃんと理解しておかねばこれからの生活、関係にもズレ等起きるかもしれない。いや起きちゃだめだって僕は思う。
そんな母さんとの会話をしてから僕はいろいろと思慮しないといけない……そう思うんだ。
それから風間先輩は話を聞いたけれど、今付き合いのある人にも聞いてみたりするのも良いかもしれない。
とりあえず一人勝手にこうだと決めつけるのはやっちゃ駄目だなって……
はははっほんと今頃自分のことでこんなに考えることになるとは思わなかった。それでもこうやって考える機会ができたことは良かったと僕は思う。気付かずそのまま考えることなく生きていけばきっと僕は後悔した気がするから……
それでも緊張はしている。
何を言われるか想像がつかないから。いや……ひとつだけ、昔の僕が良かったという言葉だけは思いついた。
一番僕には何もできないことだけれど……もしそうでも受け入れるつもりではいる。そして今後について色々と考えようとは思っている。っていかんいかん。また勝手にひとりで考え出した。
とりあえず家にもうすぐ着く。
これからゆっくりと母さんと話をしよう。
大事な人と。
これからのために。
僕自身のためにも。
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