第51話 早く来ないかなあと
僕は校門で待っている。
今日から榊原先輩が学校へと復帰してくるから。榊原弟の話では親に車で送ってもらうと言っていた。
別に僕がここで待つという話はしていなかったけれど、学校へもなぜか早く来てしまったから……いや、榊原先輩が気になっていたという事を否定しても仕方ないか。気になって早く来てしまったんだな。
そんな僕が校門の端の壁に寄りかかって待っていると
「坂井くんおはよう。今日は早いね。さては榊原先輩が気になって早く来たとか? 」
そう言って校舎側から現れたのは風間先輩。風間先輩は風紀委員もあるしいつも早く来ているんだろうなあ。そんな風間先輩の挨拶に
「おはよう。はははっ誤魔化しても仕方ないね。そうだよ。朝から気になって思わず早く家から出ちゃったよ」
と挨拶とともに素直に風間先輩のおっしゃるとおりと僕は答えていた。そんな僕に
「ふふふっ誤魔化さなくてもいいのにね。気恥ずかしかいんでしょうね? 」
と笑顔でそう返してくる風間先輩。そうだね、気恥ずかしかったんだと思うよ。そんな僕と風間先輩の側に校舎からまたひとり現れる……佐竹だった。
「風間先輩、坂井くんおはようございます。ふたりが見えたんで来てみたんですけどなにかあったんですか? 」
佐竹は性格が軽いのか気軽に僕たちに話しかけてきた。風間先輩は佐竹が嘘をついたことも知っているのにね。あっ風紀委員で一緒だからあんまり関係なかったのかも。そんな佐竹を風間先輩はじろっと見つめる。そして今度は僕を見て
「ねえ? 坂井くん。佐竹さん……とも仲良くなったの? 」
と不機嫌そうにそう尋ねてきた。ああっまだ話してなかったや。ふぅ、もしかしてまた女を捕まえてるとでも思っているのだろうか?
「ああ、まだ話してなかったね。とりあえず榊原弟と金沢がなんていうかで決まるんだけど僕たちと一緒に過ごしたいんだってさ。まあ目的は僕じゃないよ? 別の人。もしかしてまた女捕まえてとか思ってない? 」
僕がそう言うと風間先輩は安心した表情してくれた。けれど
「あああっちょっと待って待って。なんで言うのよ。私に気になる人がいるってことを! 」
佐竹は顔を真赤にしてそう僕に突っ込んできた。けれどそんな佐竹に
「佐竹さん、おはよう。えっとね、坂井くんが言った話は私と榊原先輩は聞いておかないと駄目な話なの。それはね、ちゃんとそれを聞いておかないと私と榊原先輩が不機嫌になったままだったところだよ? 坂井くんに好意持ちが私と榊原先輩。だから他に女はもう近づいてほしくないのよ? わかった? 」
と僕ではなく風間先輩が真剣な顔をしてそう説明した。というか風間先輩、自分が好意を持っているなんて話をそうぽんぽんと話しても問題ないんだろうか? 僕がそんな事を思っていると
「坂井くん……そういうことなのね。ふぅ……風間先輩、私が好意を寄せている人は違う人です。名前までは言えませんけれどね 」
佐竹も諦めたのか素直に風間先輩にそう告げる。それを聞いた風間先輩は表情を笑顔に変えて
「ならば良し! 」
と了承するのだった。というか風間先輩に許可がいるのか? 榊原先輩にも? そんな事考えもしてなかったんだけど……
「で、ふたりはなにしているんです? 」
そうそうその話をしているところだったと僕は思い出し、その話をしようとしているところに
「坂井、なにしてるんだ? 」
今度は校門の外からやってきた人ひとりから声をかけられる。金沢だった。
「ああ、金沢おはよう。榊原先輩を待っているところだよ。佐竹さん、そういうことだよ。というよりも人が集まってきたな。後これに榊原先輩と多分弟もついているだろうし……」
と佐竹への説明が金沢への返事と重なって話すこととなっていた。というかなにこれ? 学校に来た人はジロジロと見ていくし。なんだかなあ。ひとりならこんなことなかったのに。いつの間にか人が増えていってるし……
そんなことを考えていればまたひとり。今度は校舎側から……
「朝から集まってなにしてる? あれ? 風間さんまでいるんですか? 坂井、お前まで! それに佐竹? これはなんの集まりだ? 」
喧しい白石先輩まで来てしまった。ああ……面倒くさい。
なんだかもう話すのも面倒になってきて僕は思った。
早く榊原先輩、来ないかなあと。
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