第48話 え? おまえもか!



 榊原弟と金沢がこれから僕と一緒に過ごしたいと言っていても目的は榊原先輩だからと来週からでいいよねとふたりに告げていたのだけれど、なぜかいつも3人で過ごすようになっていた。


 なぜか?


 それは榊原弟が僕に榊原先輩の話をしにやって来ていたからだ。相談やら自慢やら……というか榊原弟からの話はほとんどそれしかない。まあそれはいいとして……その話を金沢が聞きに来るのだ。榊原先輩の話なら聞いておきたいと……

 そんなふたりを見てはっきり言ってふたりで話せばいい、僕なんていらないやんとは思うんだけれど僕を通じての関係なものだからどうもふたりで話すのはまだ無理のようで。まあ榊原弟と金沢の関係がこれを通じて良くなるならいいかと少し諦め気味に相手をしているという感じになってしまっていたのだった。


 そうそう、僕には榊原弟に2つほど話さないといけないことがあった。


 まずひとつめはスマホ。「壊されたから弁償してもらわなければ親にも言わないといけなくなるよ」と話してみると、榊原弟は榊原先輩とその話をしていたらしい。それで結論、弁償はするとのことだった。榊原弟自身、お金も持っているようだった。もし足りなければ榊原先輩から借りて弁償するつもりらしい。

 そんな榊原弟だったので僕からは「はっきり言うとスマホって記憶を失ってから録音くらいしか使っていなかったので安いのでいいよ」と伝えておいた。ただ、それを聞いた榊原弟は榊原先輩にお金を借りなくて良いと言うのが嬉しいのかニコニコしていた。

 そんな榊原弟を見れば「やっぱりやめた、高いの買ってきて」と意地悪してやりたくなるだろう? と思ったが、とりあえずはそう言わず黙って任せることにした。うん、僕って良い人だな。無駄なお金を使う必要なんてないからね。


 そしてもうひとつ、榊原弟の取り巻きはどうしたのか? ということ。

 榊原弟が言うには「僕と金沢に手を出さない」と告げると取り巻きは「急にそう言われても納得行かない」と文句を言ってきたらしい。だから榊原弟は「俺はもうしない。納得行かないなら行かないでいい。後はお前らで好きにしてくれ。もう俺は関係持たないわ」といきなり縁を切ってきたらしい。取り巻き達は俺のその発言に驚いていたようだったわと榊原弟は笑いながら言ってたけれど……取り巻きたちよ。捨てられちゃったのねとちょっと可哀想に思えた僕だった。


 さて、取り巻き達は今後どうするんだろうね。


 そんな僕と榊原そして金沢がつるみ始めてから数日、僕はあることに気がついた。ちらちらとこちらを見ていく人が居ることに。誰か? それは佐竹だった。廊下を歩いては僕たちをチラチラ見てどこかと去っていく。うーーん。何が気になるんだろうと僕は思っていたんだけれど……週末の放課後、なぜ佐竹がそうしていたか判明することとなる。


 僕がいつものようにひとり屋上に来ていると


「……やっぱりここにいたのね」


 そう言って佐竹が屋上に現れた。うん? ちらちら見ていたのは僕に用事があったから? そんなことを考えつつ


「最近ちらちらと僕たちを見ていたのはわかっていたけれど用事があったわけね。で、なに? 」


 と僕は佐竹へと尋ねる。まああまり良い印象を持っていない相手なのでちょっと冷たい言い方になっていて申し訳なかったが。


「……お願いがあってきたの」


 と佐竹が言い出しにくそうな感じで僕にそう伝えてきたので……面倒くさいと


「とりあえず言って。言ってくれないとわからないよ」


 とまたまた冷たい感じで告げてしまうが、佐竹よ。もう諦めてくれ。


「……えっとね。たまにでいいから私も仲間に入れてくれないかな? 」


 佐竹がそんなことを僕に告げてきた。え? なに? クラスも違うのになんで? わけがわからないと僕が呆けた顔をしていると


「いつの間にか坂井くんと榊原くん、仲良くなってるよね? ふたりがそんな関係になってから私、榊原くんとまったく関わりが持てないの。だから……榊原くんの近くに居たいから入れてほしいの。お願いします」


 え? 佐竹? お前もか! 金沢に続いて佐竹まで入りたいとは! 僕は思わず頭を抱えてうずくまってしまった。なんでこんな面倒くさいのばっかり集まって来るの? にしても僕って面倒くさがりなんだなあ。面倒くさいばっかり言っている気がするよ。


 そんな僕の様子に佐竹は慌てて


「え? いきなりうずくまって大丈夫? 」


 と僕を心配してきたんだけれど……こうなったのはお前のせいだよと言ってやりたくなる。さて、僕は佐竹のこと良い印象を持っていなかったけどさあ。それを言うと榊原弟もそうなんだよね。それにさ。佐竹って榊原弟に好意を持っていたから榊原弟の策を手伝ったんだろうなあと今の話を聞くとそうわかってしまうよね。それに気付いてしまうと僕はもうどうでも良い気がして。


 だから僕はこう答える。


「はあ……ほんと、佐竹もかよ。はぁ……もうひとりもふたりも変わらないか。別に来ていいよ。ただ、榊原に金沢そして風間先輩に榊原先輩。これだけメンバーが居るけれどいいか? 後、他のメンバーが佐竹のことを嫌がったりしたら入れられないかもしれないけれど……そこは勘弁してな」


 と僕がそう伝えると


「わっやった。ありがとう」


 そう言ってすごく良い笑顔で微笑む佐竹。というかこんな笑顔見せられたら嫌だなんて言えないわと僕はそう思ってしまったのだった。




 けれどひとつだけ……佐竹は榊原弟の姉さん話についていけるのだろうか?

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