第46話 僕に対する物言いと違うじゃない



 僕と風間先輩そして坂井弟の3人で榊原先輩の病室まで来た。足の怪我……骨折らしいが家か病院に入院どちらが良いか榊原先輩に尋ねたところ、家で家族と居たくないと病院の入院を選んだそうだ。


 さてと僕は病室のドアをノックする。榊原先輩の部屋は以前も来たが個室なので周りに気にする必要もない。


「はい、どちらさまでしょうか? 」


 久しぶりに聞いた榊原先輩の声。思ったよりも元気そうな声に僕はなんとなくほっとした気分になっていた。


「僕です。坂井です」


 そう告げると、榊原先輩は慌てたように


「坂井くんだ……あっ入ってください。どうぞ」


 と僕たちにそう告げたのだった。




 僕たちは榊原先輩の病室へと入る。そして榊原先輩のそばへと向かった。その榊原先輩は榊原弟を見てちょっとむっつりしたものの僕と風間先輩を見てにっこりと微笑んでいた。


「こんにちは。怪我の具合はどうですか? 」


 僕はまず体の具合はどうかを聞いてみた。


「ええ、骨折ですしギプスで固定もしてありますから痛みとかは感じません。ただ、生活に不便ではありますが。まあ入院している身でそんなこと言っても仕方はないんですがね」


 そう榊原先輩は言いながらもぼくをじっと見ていた。そして


「今日来てくれたということは……離れなくても良いってこと……でしょうか? 」


 榊原先輩はいきなり結論から僕にそう尋ねてきた。はははっ榊原先輩、相当焦っていたのかと僕はちょっと笑ってしまいそうになる。けれどそんな榊原先輩に


「はい。もう問題も解決しましたし。榊原ももう僕に手を出さないってことになりました。ただ……ほれっ榊原。ちゃんと自分で言え」


 僕は榊原先輩にそう伝えるとともに榊原に僕たちと一緒に過ごしたいという希望があることを自分で伝えさせようとした。すると榊原弟は困惑した顔をして


「え? 坂井から言ってくれるんじゃないのか? 」


 と榊原先輩にではなく僕へと言葉を発してきた。おいおい、僕に対しては言いたいこと言ってるくせに榊原先輩には言えないのか? と僕は呆れた顔をしながら


「当たり前だろ? 僕は榊原のフォローをするだけだ。認めはしたけどちゃんと伝えるのはお前の役目だよ」


 と榊原弟に告げるのだった。




 困った顔をしながらもいつまでもこのままでは駄目だとわかったのだろう榊原弟は


「姉さん……俺も坂井と一緒に居てもいいか? 」


 とこいつも結論を告げていた。なんでとかそういうのを話さない……姉弟揃っていきなりだなと僕は少し笑っていた。ちなみに横でおとなしくしている風間先輩も同じことを思ったのだろう笑いを抑えようと必死になっているように見えた。


 その言葉を聞いた榊原先輩は僕と離れなくてよいという言葉に浸っていたようだったが、榊原弟の言葉にはっと我に返ったようで


「は? なんで広斗が坂井くんと一緒に居る必要があるの? 」


 と榊原弟に突っ込んでいた。はははっそりゃそうだ。今まで僕をいじめていた榊原弟がなんで一緒に居るということを望むのか。不思議になるよなあ。そんな榊原先輩の言葉に本音を言えない榊原弟は困ったように僕を見ていた。ってもう駄目か。まあちゃんとお願いはしたってことで助けるかと


「榊原先輩。榊原も反省しているようだから。だから僕と仲良くするって意味でも僕と一緒に居るってことですよ。僕も居てもいいと榊原には告げましたから。後は榊原先輩が認めれば問題はないってことです。まあ、僕と榊原が仲良くなれば榊原先輩も安心でしょ? 」


 とうまいこと思いついたなと僕も思いながらそう榊原先輩に告げる。ちなみに僕の横で榊原先輩に向かって縦に首を振りまくっている榊原弟が出来上がっていた。その様子を見ながらも榊原先輩は考え込んだ後、こくんと首を縦に振った後


「坂井くんがそう言うなら。確かに私としても弟と坂井くんが仲良くしてくれる方が嬉しいと思います。わかったわ。ただし、広斗。坂井くんに迷惑かけちゃ駄目だからね」


 榊原先輩は認める言葉の後、榊原弟を睨んで僕と仲良くするように告げる。そんな榊原先輩に認めてもらえたことが嬉しいのかニコニコしながら


「ああ、大丈夫だよ。もう馬鹿なことはしないから」


 と良い返事を返していたのだった。




 そんな様子に僕はまた笑いが出そうになっていると横から風間先輩が


「なんかあっけなく終わったけれど……榊原先輩が元気そうで良かったわ。坂井くんが突き放した時すごく悲しそうに泣いていたから。本当によかった。まあ争奪戦は正々堂々といくけどね。というか私来た意味まったくなかったかも。まあ榊原姉弟にに笑わせてもらったし良いかな? 」


 と僕にそう声をかけてきた。確かに風間先輩はろくに会話していないな。まあ、仲直りできたから良しとしてねと思いながらもまた榊原姉弟を眺めるのだった。

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