第45話 面倒くさい
いつ榊原先輩に会うかは榊原弟に任せようと思っていたのだが、今日すぐに会ってくれと即座に言われた僕。都合も榊原先輩に確認済みだそうだ。向こうもすぐに会いたいと言っているということで……
ちなみに榊原弟も一緒に来るそうだ。そこまで監視したいのか? なんて思ってしまうが見られても困るものなんて無いのだから断る理由もないわけで。それに榊原弟にとっては自分の姉さんだしね。僕がどうこう言える筋合いもないかと。
そして……なぜか風間先輩も来るということになっていた。というのも現在、風間先輩と榊原先輩は連絡先を教えあってやり取りをするようになったらしい。そのため、昼休みの勉強会で
「榊原先輩から聞いたわ。仲直りするんだって? それに今日会うことになってるって。やっぱりライバルとのやり取りはみたいし私も行くわね。ちなみに榊原先輩にも確認済みだから」
と僕が返事をする隙もない言葉を告げられた。そう、榊原先輩に先に約束をつけられているのだから僕としてはもう何も言えないじゃない? というか風間先輩にしても榊原弟にしても動きが早すぎじゃない? 本当に呆れ返ってしまうよ、僕は。
とりあえず学校終了後に僕、榊原弟、風間先輩は校門で待ち合わせをしていた。なお、風間先輩は榊原先輩の病院に行くということで風紀委員を休ませてもらうことにしているそうだ。ただ、先日も休ませてもらっていたので大丈夫なのか心配したが
「普段は真面目に活動しているから問題ないわよ。それに榊原先輩のことは先生も知ってるわけだしその関係で休むんだからきっと何も言われないわよ? 」
と問題は特になさそうな感じで風間先輩は僕に返事をくれた。それならいいんだけどね。
僕と榊原弟が学校が終わり校門まで行くとすでに風間先輩が待っていた。
「おつかれ、坂井くん。待ってたよ」
そう声をかけてくる風間先輩。そんな風間先輩の様子を見た榊原弟は
「なんで風間先輩がいるんだ? 」
と不思議がっていた。そんな榊原弟に
「ふふふ、私も一緒に行くのよ? 私、榊原先輩と仲が良いから。まあライバルでもあるんだけどね」
と風間先輩は平然とした顔で榊原弟に返事を返す。それを聞いた榊原弟は
「……風紀委員として来たわけじゃないんですね。仲が良いのはわかりましたが……ライバル? 」
と不思議そうな顔をして風間先輩にそう尋ねる。その顔を見た風間先輩は少し微笑んで
「ええ、榊原先輩が坂井くんのこと好きなのは榊原くんも知っているでしょ? ちなみに私もそうなのよ。だからライバル……なのよ? 」
とからかうような感じで榊原弟に言うものだから、榊原弟は少し憮然とした顔をしながら
「おい! 坂井。お前、ふたまた? ふざけてんのか? 」
と僕に突っ込んできた。多分、勘違いを起こしたんだろう。だから僕は
「おい、待て。僕は誰とも付き合ってないって。確かにふたりに告白はされたけどな。ちゃんと言っただろう? 記憶をなくして数日の僕がそんなことすぐに決められないって」
と落ち着くようにそう言って榊原弟をなだめる。そして風間先輩を睨んで
「ふぅ……なんで誤解するような言い方するかなあ。もう面倒くさくなるなら連れて行かないよ? 」
と告げると、風間先輩は困惑した顔になり
「ああ、ごめんなさい。別にそういうつもりじゃなかったんだけど。ちゃんと榊原くんのお姉さんとの関係を話しておこうと思って……ちょっと悪乗りしたのは悪かったわ。ごめんなさい」
と慌てて僕と榊原弟に謝ってきた。まさか風間先輩が謝ってくると思わなかったのだろう榊原弟は慌てて
「いえいえ、大丈夫です。わかりましたから。というか坂井。風間先輩のことを俺にも話してくれてれば何も問題なかったはずだぞ。だからお前が悪い」
となぜか僕を悪者にする榊原弟。そんな理不尽なと思いながらも、もう面倒くさいのは嫌なので、言い返すこともせず
「はぁ、わかったよ。僕が悪いでいいから。もう面倒だから行こう。はぁ……なんだかなあ」
と僕は頭をかきながらも、もうふたりを相手にせず病院へと歩いていく。そんな僕に慌てて
「待ってよーー」
「坂井、こらっ待て! 」
と言いながらもふたりとも走り寄ってきてやっとみんなで向かうことができたのだった。
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