第44話 ほんとにお前は……



 とりあえず、悩ましかった一番片付けたかった榊原弟からのいじめに対しては終わったかなあと考えながら今日も僕は学校へと向かった。

 そして榊原弟とも話が付いてるし、もう教室に入るのに気を使うこともないかなあと僕は気にせず入って自分の席へと向い座った。


 すると僕が座ると直ぐに誰かが僕の近くへとやって来る。その人が僕の側に来ること自体今までと違うので昨日のようにクラスメイトは不思議そうに僕たちの方をちらちらと見ていた。そうちらちらと。流石にじろじろと見る人はいなかった。


 近づいてきた人物、それは榊原弟。まあ来ても不思議はないかなあと僕は思っていた。昨日、榊原先輩と話をしてきているはずだから。それについてなにか僕に話があるんだろうと。


 だから僕は


「おはよう。どうした? 昨日話しは上手く行ったか? 」


 と榊原弟に話しかける。すると苦虫を噛み潰したような顔をしながら


「坂井、話があって今日は来たんだが」


 と僕に告げてきた。まあ予想はついていたんだが、内容は流石にわからないため


「昨日、榊原先輩と話したんだよな? そのことか? にしてもすごく嫌そうな顔をしているな? そんなに嫌なら僕に聞きに来なければいいのに」


 と僕は尋ねはするもののそこまで嫌な顔をして聞きに来なければいいのにと素直に思ったことを伝えてしまう。そんな僕に


「はぁ……。俺じゃどうしようもないんだよ。とりあえず昨日お前に対しての行動を止めることは姉さんに話したよ。そこは納得してくれた。坂井、お前が納得してくれているって話したらな」


 といじめに関して話はついたような感じのことを榊原弟は言ってきた。うん、ならそんな顔をして僕に話しかけなくてもいいだろうにと思っていると


「だけどな。それだけじゃ完全に許してくれないんだよ。もうひとつ……しないといけないことがあってな」


 と榊原弟はそう僕に伝えてきた。もうひとつのこと? なんだろうと僕が思っていると、榊原弟は仕方ないという感じで僕に


「お前と姉さんの仲を壊すなって言われてな。お前、姉さんと付き合うのか? 」


 といきなり榊原先輩と付き合うとかわけのわからないことを言ってきた。いや、たしかに告白はされたけどさ。返事もしていないしそんな関係じゃないって。


「……あのさ。僕、また記憶を無くして学校に復帰したの先週なんだよね。そう、この学校にある記憶って先週からしかないわけ。なのにもう誰かと付き合うとか考えられないんだけど」


 僕は呆れた顔をしてそう榊原弟に言うと少し怒った顔をして


「お前。姉さんが不満なのか? 」


 なんて止めてほしいツッコミを入れてきた。いやいやそういう問題じゃないって。


「だから……榊原先輩が良い悪いじゃないの。そんなことも考えられない期間しか記憶がないの。榊原……お前も落ち着けって」


 僕は榊原弟にそう落ち着くように告げていた。それに榊原弟は深呼吸をひとつ入れて


「悪い。姉さんのことになるとどうしても熱くなってな」


 そう僕に告げてきた。うん、それはわかっているさ。屋上の件……忘れていないよ。僕はそんな榊原を見ながら思い返していると、覚悟を決めたように


「まあ……姉さんの気持ちはわかってるさ。けれど……納得行かないって今まで思ってた。でも喧嘩していたら意味がないんだよ。仲が悪くなったら意味ないんだよ。だから昨日の夜考えて……坂井、姉さんと仲直りしてくれないか? 」


 榊原弟は僕にそう伝えてきた。僕はそれを聞いて驚いた。まさかこういうことを僕に頼み込んでくるとは思っていなかったから。僕としてはそれについては問題ないけれど……


「榊原。本当にお前はそれで良いのか? もう前みたいな事が無いのなら……僕は何も問題ないけれど」


 そう榊原弟自体に問題ないか……それが一番の問題で。もういじめみたいなことはこりごりだから。面倒くさいよ。


 その言葉に榊原弟は


「ああ……。喧嘩している方が俺にとって辛いってことがわかったからな。それと頼みがあってな」


 と別に何か頼み事があるようでそう僕に尋ねてきた。まあ聞かなければわからないので


「なに? 聞かないとわからないから」


 と不思議そうに僕が尋ねると、榊原弟は


「俺も一緒に居たりしていいか? 」


 と……。いかん。おかしくなってしまった。お前……。そこまで姉さんと居たいのか? けれど笑っちゃ駄目だと僕は我慢しながらも


「榊原先輩が良いって言うなら良いよ。別に僕は問題ないから」


 と榊原弟に伝えることが精一杯な状態になったのだった。




 

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