第43話 ゆったりとした時間
風間先輩のごまかしに乗ってあげるというよりも白石先輩のことを考えるのが面倒くさいというのが本音。もう気にすること無く帰ることにした。そんな中
「そういえばさ」
風間先輩が話しかけてきた。それに対して
「なんです? 」
僕はなんだろうと返事を返す。そんな僕に
「坂井くんも変わったよね。私達に対して……ううん、榊原先輩にはもう少しかしこまってるかな? うーん。えーとね、話し方が結構変わってきたかなって思って」
風間先輩はそんなことを僕に告げてきた。話し方が変わった? うーん、意味がよくわからない。
「風間先輩、どういうことです? 」
だから僕は素直にそう尋ねた。そんな僕に風間先輩はニコッと微笑みながら
「大分、私達に対して気軽になってきたっていうのかな? 丁寧語? じゃなくなってきたと言ったら良いのかな? 全てじゃないけどタメ口とまでは行かない程度に友達のように気軽な口調になってきたかなって」
僕を見ながらそう伝えてきた。うーん、僕は全く気づいてなかった。先輩だからと丁寧に話しているつもりはあったけれど……ボロが出てたのかと。それともボロが出たのではなくそれだけ心を許してる?
「うーん、ごめんなさい。全く気付きませんでした。丁寧に話さないと駄目ですよね。一応先輩ですから」
そんな考えが浮かんだけれど、一応先輩だしと僕は丁寧に話しかけた。すると
「ううん、そうじゃないの……って一応って何よ。まあ、それは置いといて。というより丁寧じゃないほうが私は良いの。だって近くに感じられるじゃない? 丁寧に話しかけられるとなんていうか少し離れた感じ? で接せられてる気がするから。だからさ、もうタメ口? それでいいと思うんだよね」
と風間先輩は僕にそう告げてきた。そういえば、風間先輩は多くの人に壁を感じるって言ってたななんてことを思い出した。だからかな。そういうのに敏感なのかもしれないなあ……そう僕は考えると
「うん、わかったよ。タメ口とは違うかもしれないけれど僕らしく普通に話すよ。それでいいかな? 」
と風間先輩が望むように僕らしい普通の言葉で話すことにした。無理に丁寧に話すのではなく。
「ふふふっ、ありがとう。嬉しいなあ。そういえばさっきも聞いたでしょ? 白石くん。私に丁寧な言葉づかいで話しかけてきたでしょ? 同級生なのに……わけわかんない。でもそういうこと多いんだあ。うーん、風紀委員長って言うのが関係してるのかな? それとも私自身のせいかなあ」
確かに風間先輩の言うとおり白石先輩も丁寧な口調で話しかけてきてたなあ。僕に対しては全く違ったけど。ある意味使い分けできて器用だなあなんてさっきの会話を思い出しながら僕はそれについて思ったことを風間先輩へと告げる。
「白石先輩、器用だったね。僕に対しては全然口調が違ったし。そのくせ風間先輩には丁寧な口調だったもんなあ。でも、白石先輩の場合は風間先輩のことを好きだからってこともあるんじゃないかなあ。緊張すると丁寧な口調になったりするし」
そう、やっぱり好きな人に対しては緊張するというか丁寧になったりするもんじゃないかなあって僕は思った。だから思いのままそう伝えると
「うーん。そういうものなのかなあ。私は違うと思うんだけど。だって坂井くんに普通に話してるよね? 遠慮なんてしていないと思うんだけど」
と風間先輩は自分のことを考えながらそう僕に伝えてきた。確かに風間先輩は最初から遠慮なんてなかったなあと僕は
「確かに最初から遠慮なんてなかったもんね。初っ端から泣きながら友達になってなんて言われて僕も断るにも断れない、そんな状況だったなあ」
と屋上で会話をした時にいきなり泣き出したときのことを思い出し笑ってしまう。そんな僕を見て風間先輩は顔を真赤にして
「笑わなくてもいいでしょ。……だってここで逃したら駄目だって思ったんだから」
照れ隠しにそっぽを向いてそう僕に告げていた。
そう、そんなゆったりとした時間を過ごしながら今日は帰宅することができたのだった。
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