第42話 女難の相
いつもどおりの風間先輩からのお誘いで一緒に帰ることになった僕は校門で待っていた。風間先輩はいつもと違い素直に「いいよ」と僕が返事をしたもので「どうしたの? いつもはごねるのに悪いものでも食べた」なんて失礼なことを言ってくれたが。まあそういう日もあるよ、僕にだって。
ということで僕が校門で待っているとなにか揉めているような感じでふたり程の人が校門へと歩いてやってきていた。ひとりは……うん、風間先輩だ。もうひとりは? 見たことある気がするが思い出せない。誰だろう……
そんな事を考えながらふたりを見つめていると僕を見つけた風間先輩はその相手を振り切って僕の方へと走ってきた。
「坂井くん、お待たせ。でも……しつこいのが付いてきているの。ちょっと説得するの手伝って」
風間先輩は僕にそう言うと風間先輩の後から走ってくる男の人を説得するのを手伝ってくれと言ってくる。いや、それは良いんだけど何をしたら良いかわからないし、あれ誰? 状態なんですけど。
「手伝うのは良いんだけどあれは誰です? 」
と僕が聞くと風間先輩は少し呆れた顔をして
「坂井くんがクラスで揉めた時に説明を聞くとき居たでしょ? うちの副委員長よ。白石くん」
と言われてあーーと僕は思い出す。そんなことをふたり話していると白石先輩も僕たちの元へとやってきた。
「なんで坂井がここに居る? 風間先輩、こいつはほっといて一緒に帰りましょう」
うん、僕のことをスルーする気みたい。けれど、それを聞いた風間先輩は
「なんであなたと帰らないといけないのでしょう? 私は坂井くんと帰る約束をしていますのであなたこそひとりで帰ってください」
と僕と一緒にいるときとは違うキリッとした少しきつめの言葉で白石先輩へとそう告げる。
「なんで駄目なんでしょう? それにそろそろ僕への返事もいただけないでしょうか? 」
と僕には意味のわからない話もあるようだ。うーーん、なんだか面倒くさい。
「風間先輩、僕ひとりで帰りますよ。申し訳ないけど面倒くさい」
僕は素直にそう言うと風間先輩は膨れた顔をして
「ちょっと待ってよ。せっかく榊原先輩居なくてふたりきりなのにそれは無いよ」
と僕に対してはいつもの風間先輩で告げてきた。ほんとこの人他の人には壁を作ってるなあと思っていると
「坂井。風間さんに馴れ馴れしいぞ。さっさと帰れ」
となぜか僕が怒鳴られる始末。
「はぁ……じゃ言われるとおり帰りますよ。風間先輩また」
と僕はもう関わりたくないとそう言って帰ろうとすると
「坂井くん、だから待ちなさいって」
風間先輩は慌てて僕の腕を掴んできた。それを見た白石先輩は驚いた顔をしていた。風間先輩はそんな白石先輩の方を向き
「あのね、私断ったよね。白石くんとは付き合えませんって。なんで返事がまだとか言ってるんです? いい加減に諦めてください」
とはっきりと断りを入れていた。というより返事はまだですか? とか言ってたけれど断ったって言ってるし……なにこれ? 白石先輩が聞く耳持たないってこと? はぁ……なんでこんなに面倒な人が多いの? この学校って。
僕はふたりの会話を聞いて呆れた顔をしていると、風間先輩はなにか思いついたような顔をすると
「ちょうどいいわ。私の好きな人は坂井くんだから。白石くんのことは付き合えません。好きでもありません。無理です。わかりましたか? 」
とはっきりと僕が好きだと白石先輩へと伝える。すると
「え? 風間さんの好きな人が坂井? 嘘ですよね? 」
と白石先輩は顔色を変えてそう風間先輩に問い詰める。けれどそれに対して風間先輩は顔色も変えず
「坂井くんが好きですよ? ここのところずっとアプローチしてますから。ただ、ライバルが居るからそう簡単に付き合ってもらえませんけれどね」
とはっきりと再度白石先輩に伝えるとしばらく黙っていた後
「……。とりあえず今日は諦めます。坂井、覚えていろよ」
と怒り気味の顔で僕にそう言い残し白石先輩はひとり帰っていった。いや、なんで僕が恨まれるの? 面倒くさいなあ。
「さて、邪魔者は去ったし帰りましょ? 」
風間先輩は今までのことが何もなかったかのように振る舞っていた。それを僕はジト目でみながら
「なんか僕が恨まれちゃってるんですけど」
と言うと、風間先輩は頭をかきながら困った顔をして
「まあ、私が坂井くんのことが好きってことは間違っていないんだし……ねっ」
とごまかそうとした。僕は呆れながら……今後何事もなければ良いなあと考えるもまあいいかといつものように気にすることをすぐに止める僕が居たのだった。
ただひとつ。もしかして僕って女難の相があるのか? とは思ってしまったが。
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