第41話 屋上で思いにふける
昼休みの勉強は朝のせいで休みにしてもらった。そのため風間先輩はブーブー言っていた。勉強を教えて欲しいと頼んでおいてまだまともにできていないわけで僕も申し訳ないとは思ったけれど流石に疲れたので勉強に身が入る気がしなかった。だから許してほしい。風間先輩。
まあ、変わったことはそれだけでその他は特に何事もなくその日は終わる。いや違うな。放課後、榊原弟は僕に声をかけてきた。
「もうあいつらに手を出さないように伝えたよ。とりあえず姉さんと話してみる。……悪いがなにかあったらまた相談していいか? 」
と神妙な顔で僕に告げる榊原弟。僕はいままでの榊原弟は何だったのか不思議でならない。いや……それだけ榊原先輩が大事なのだろう。それでもやっぱり僕はおかしくなり笑いながら
「ああ。榊原先輩の為になることだったら協力はするよ。ただし、榊原先輩が為になることだけだからな? お前のためにすることじゃないってことだ」
と告げると
「ああ、それでいい。姉さんのためだな」
そう言って慌てて教室を出ていった。僕はそれを見て、ああ……早く榊原先輩に会いに行こうと慌てて帰ったんだろうなと思い更におかしくなる。けれどその様子を見たクラスメイトたちは不思議そうにしていた。まあそりゃそうだ。いじめの加害者と被害者がいつの間にか普通に話していたのだから。そして
「なあ、坂井。どういうことだ? 」
やはり気になったのだろう金沢が声をかけてきた。そりゃこの前までやりあっていた相手から話しかけてきたんだからね。だから僕は金沢にもう解決したと説明した。ただし、榊原弟のシスコンについては黙ってやることにする。榊原先輩にとっても学校内に噂が広まったら困るだろうし。
金沢はあまり納得行かないようだったがとりあえず話を終えると僕はいつものように帰り支度をしてから屋上へと来ていた。
ぼーっとしている僕はとりあえずいじめは解決したのかな? と考える。張本人の榊原弟との和解が成立したからにはもうないだろう。まあ取巻きたちが暴走でもして勝手に僕に手を出してくるならわからないが。ただあいつらなら馬鹿だし問題ないなと取巻きのことを考えるのはやめた。
佐竹はよくわからない。別に手を出してきたわけでもなくただデマを榊原弟に頼まれて作っただけだしな。こっちももういいだろう。
そして金沢とも問題はなくなっている。うし、これで片付いたな。ああ、榊原先輩と弟の話し合いがどう転ぶかわからないのでその結果変わることもあるかもしれないけれどまあそうなったらその時はその時だ。
ただ今回の件が解決したにあたってひとつ思うのが……このいじめに対しての結果について、過去の僕、記憶にない僕はどう思うんだろうと。相手に仕返しなんて望んでいるのだろうか? 実際自殺未遂をした原因は何だったのだろうか? その原因がいじめだったのなら収まりがつかないだろうな。
いろいろと考えてしまうけれど結局今の僕にはもう理解することができないのだから。それなら別に問題がなくなれば今の僕はそれでいい。周りなんてどうでも良い。僕が不自由なく学校生活が送られればそれでいい。
過去の僕、悪いがこれで許してくれ。とりあえず生活できる、嫌なことがなくなった生活を取り戻したから。
もう面倒事をわざわざ作る必要なんてないだろ? な?
僕はそんな事を考えながらいつものように空を見上げて思いにふけっていた。
するといつのまにか結構な時間が経っていたようで、考え事をしていた僕にある人物から声がかかる。
「坂井くん。今日もいたわね? 」
そう言って声をかけてきたのは風間先輩。ああ、いつもどおり。ほんとこれも当たり前になってきた気がするな。
「こんにちは、風間先輩。あっいじめ終わりましたよ。もう問題ないです」
と僕が会う早々風間先輩に告げると不思議そうな顔をして
「え? なんで? 」
と呟いていた。それから僕は風間先輩に榊原弟と今日あった出来事を説明した。すると風間先輩は呆れた顔をして
「……なんか呆れた。それだけ? それだけでいじめなんてするの? ふぅ……榊原先輩も大変な弟を持ったもんだわ。まあそれは良いとして榊原先輩とのことはどうするの? 解決したのならもとに戻っても良いんじゃないの? 」
榊原弟に対してそう言うもやはり榊原先輩のことが気にかかっているようでそれについて尋ねてきた。だから僕は
「うーん。こればっかりは姉弟の話し合い次第じゃない? それが上手く行かないと弟がまた暴走するでしょ? 」
と思っていることを素直に伝えた。それに対して
「うーん。だったら弟くんのことを榊原先輩に素直に伝えたら? 」
風間先輩は榊原弟が一番嫌がりそうなことを簡単に僕に伝えてきた。いや……それはまた揉めるでしょと僕は思い
「いや、それを言ったら榊原弟は逆上するよ? きっと。流石に嫌がると思う。ってかそんな簡単にしたら問題起きそうなことを言わないで」
僕は風間先輩に呆れながらそう伝えたのだった。
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