第40話 執着
倒れている榊原弟を見て思う。本当にこいつは何がしたいんだと。ここに来てから榊原弟は姉さん姉さんしか言わな……い? そういうこと? そう考えれば辻褄が合う。佐竹が彼女だとありもないことを榊原先輩に伝えて……気に入らないから僕をいじめて……
そう思うとイライラしてきた僕。それでいじめられるのか? と。だから確認するために
「なあ、榊原。もしかして姉さんが僕に取られるかもと思って僕を虐めたり、佐竹を彼女に仕立て上げたりしたわけ? 」
と僕は榊原弟に率直に尋ねた。それに対して榊原弟は睨むように僕を見て
「お前なんかに姉さんが釣り合うわけ無いだろ? ビビリで弱虫で何もできないお前なんかに」
と答えにはなっていないが、そうだと僕にわからせる言葉を吐いてきた。その言葉を聞いてイライラが収まらないが相手にしてもしょうがない、殴ったら駄目だと自分に言い聞かせながら
「なら、榊原先輩から離れたんだからもう良いわけだな? まあお前は嫌われちまったけどね」
だから僕はもう良いだろ? と榊原弟に言ってやる。けれど
「いやお前が俺のせいにしたから姉さんが俺からも離れていくだろうが」
と自分のした事さえ理解していないのか榊原弟は僕のせいだと言ってくる。それを見て僕は
「はぁ……ならどうすりゃいいんだよ? とりあえず僕としては榊原先輩を困らせたくないだけなんだけどな。榊原先輩と離れてお前がいじめ……いや、もういじめになってないけどな。昔と違って。まあ、僕にちょっかい出してくるなんて馬鹿なこと止めれば本来ならもう終わりなんだよ。それにしても榊原先輩が離れたのは僕をいじめたお前自身のせいだろが。それくらい自分でどうにかしろよな? 」
と面倒くさそうに榊原弟にそう告げる。はぁ……にしてもイライラが収まんないなあ。こんな事でいじめられていたってすごく馬鹿らしすぎる。おまけに自分のせいを僕に擦り付けてくるし。こいつ性格曲がってるなあ……本当なら殴ってやりたいと思うんだけど、いじめを止めさせるには榊原弟ときちんと話さないと駄目だからなあと呆れとイライラでどうにかなりそうな頭をなんとか冷やそうとする。そして
「そういや取巻きどもは僕のいじめの原因がお前の姉さんが原因だって知ってるの? 知ったら怒るんじゃない? 理由が理由だし……」
と僕は気になったことを榊原弟に尋ねてみた。それを聞いた榊原弟は
「つまらなくなんかない。大事なことだ」
と怒りの顔をして僕にそう告げてきた。はぁ……取巻きどもも哀れだなあ。ほんと使われるだけの手下と化してるし。理由知ったらきっと怒るだろ? それさえわからない榊原弟も困ったもんだ。
「はぁ……ならいいよ。その辺には関わらないし。なら、とりあえずもういいだろ? 僕に関わる必要なんてもうないだろう? いじめを続けていたら榊原先輩と仲直りもできないぞ? 」
僕は話を進めるには榊原先輩について話をするしかないかなとそう考え榊原弟にそう伝える。
「いじめを止めれば仲直りできるだろうか? 」
すると急に僕の話を聞き出し悲しそうな顔で僕に尋ねてきた。おいおい、僕に聞くなよ。
「まあ榊原先輩にいじめを止めるって話してみれば? もしかすると仲直りできるかもしれないな? というか僕をいじめる理由なんてもうないだろ? って何回同じこと僕も言ってるんだか……」
僕は榊原弟に同じことばかり言っている気がして少し可笑しくなってきた。まあ、榊原先輩が僕と引き離されたことについてどう考えているかはわからないから本当はなんとも言えないんだけどね。そこは頑張ってとしか言えないが。
「まあ……そうだけど……」
と榊原弟も落ち着いてきたのか僕の言葉を聞くようになっていた。というかいじめ相手の言葉を素直に聞くってどれだけ榊原先輩に執着しているんだか。いや、これだけ執着しているから僕という敵を潰そうとしてきたんだろう。普通こんなことでいじめなんてしないだろ?
「まあ榊原先輩と話してくれば良いんじゃない? いじめを止めるって僕に伝えたことまで言えば少しは話を聞く気になってくれるかも……ね。まあ、僕だけじゃなく榊原先輩もいじめがなくならないと困るんだよ。お前のこと心配してたんだからな。屋上でお前も榊原先輩と会った時に悲しそうな顔をちゃんと見ただろ? それと僕としてはお前と榊原先輩は家族、姉弟なんだから仲良くしてくれないと……また怪我もさせたくないから。いい加減目を覚ませ。榊原先輩が嫌なことをするな。それだけ好きなら分かるだろう? はぁ……まあ今日学校終わったらさっさと会いに行って話せばいい。なんかあったら聞くから。榊原先輩の為に。言っとくけどお前の為じゃないから、榊原先輩の為にならないことは聞かないから。はぁ……それでいいか? 」
僕はとりあえずいじめを終わらすために榊原弟の相手なんてしたくないけれど榊原先輩のためだと言い聞かせてそう伝えると、その言葉に榊原先輩へ執着する榊原弟は期待を持った顔でコクンと頷くのだった。
榊原先輩が絡むとすごく素直な榊原弟だった。はぁ……殴りたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます