第39話 呼び出し
翌日、僕はいつもどおりに学校へと向かう。
昨日は風間先輩とは病院で別れた。あの後以降風間先輩は僕に特にはなにも言わなかった。ただ、何かを考えているようではあった。何かはわからないが。
榊原先輩には悪いことをしたと思っている。側にいてもいいなんて言っておきながら急に離れてくださいなんて言葉を告げたのだから。良いことなのか悪いことなのかはわからない。それでも今の僕と榊原弟の関係が無くならなければ多分今後も続いてしまうだろう。そんな事で榊原先輩と家族が傷つくことなんて必要ない。
そんな事を考えながら僕は階段を登り、廊下を歩いて教室へとたどり着く。すると教室の入口横に誰かが壁に寄りかかって立っていた。僕は関わりたくないとその人の横を無視して通り過ぎようとしたのだが
「坂井、顔貸せ」
と声をかけてきた。その人とは榊原弟。でもね、そんな風に言われると僕としてはもっと無視したくなるんだが。けれど榊原先輩のこともあるしなあと考えていると
「無視だと? いいから屋上に来い」
と反応のない僕を強引に連れて行こうとする。そんな榊原弟に
「はあ……行ってもいいけど授業は? 今から行ったら間に合わないだろうに」
と尋ねると、榊原弟は呆れた顔をして
「お前はもうしっかり休みまくってるだろ? いまさらさぼったって問題ないだろうが。さっさと来い」
と僕に告げるとめんどくさそうに僕を置いて屋上へと向かい出す。というか僕がついていくとでも思っているのだろうか? まあ榊原先輩のこともあるし、早期決着もつけないとなあとも考えていたので仕方ないなあと思いながらも榊原弟について屋上に向かうのだった。先生、授業サボってごめんなさい。
屋上に着くと先に向かった榊原弟が仁王立ちで待っていた。僕は榊原弟と少し離れた距離で向かい合うと
「で? 朝から何かな? そう言えば、取巻きは居ないんだな? 大丈夫か? まあそんなことどうでもいいか。すぐ話が終わるなら僕もさっさと教室行きたいしね」
と僕は榊原弟が言葉を発する前にそう告げる。それに対して榊原弟は
「取巻き? ああ、あいつらね。別に必要ないだろ? それよりも昨日、メモを渡して姉さんを頼んだと思うんだが? 昨日会いに行ったら「あなたとはもう関わりません」って泣きながら言われたんだがどういうことだ? 」
ん? なんだこいつ? 榊原先輩には家族と仲良くしてとは伝えたもののそう言われても仕方ないだろ? とは思うんだけどな。それだけのことお前してるんだぞ? もしかして僕がお前の尻拭いでもするかと思っていたのか?
なんだかよくわからない榊原弟の発言に僕は
「昨日会いに行ったよ。そして「あなたの弟がいる限り一緒に居られません」って言ったけど? 」
と素直に伝えると、榊原弟の顔は怒りに変わり
「坂井ーー! 」
そう叫びながら僕へと殴りかかってきた。けれど……榊原弟よ。お前周りに頼りっきりだったんだなあ。そんなへっぴり腰じゃ殴られないよ。僕はそう思いながらすっと横に避けるとともに脚を榊原弟の前に差し出す。するとそれに見事にひっかかりドタンっと転げる坂井弟。
「お前……人と喧嘩したことないんじゃないか? あんなんじゃ殴られないって。僕も記憶がある喧嘩は1回しかないから人のこと言えないんだけどね。で……お前は何がしたいんだ? お前が俺をいじめようとしていたんだから、その姉さんと一緒に居たら何があるかわからないだろうに。僕だけじゃなく榊原先輩にもね。結果、榊原先輩は両親と話し合いもできず関係が悪くなりそうになったし、お前が原因で怪我もしただろ? それにさ。お前、僕に榊原先輩を近づけたくなかったんじゃないの? 理由はわかんないけどさ。佐竹を使って彼女が居るなんてデマを榊原先輩に伝えたりしてさ。お前はなにがしたいんだ? 僕をいじめて何がしたい? 」
ほんとに榊原弟が何をしたいのだか僕にはわからない。その鬱憤をぶつけるように僕は榊原弟に言い放つ。
「なんで姉さんを振るのに俺を使うんだよ。くそっ」
榊原弟は倒れた状態で僕にそう告げてくる。痛みに慣れてないのか相当痛そうな顔をして。なんだかなあ。僕はもっと痛い思いをしていたのに。
それに振るのに使った? いやそれしか離れる理由なんてないんだよ。こいつ自分勝手すぎないか? 現状をわかってなさすぎだよ、ほんと。
あまりにも情けなさ過ぎて僕は榊原弟のことがどうでも良くなってきてしまう。それでも僕は
「いやさ。離れる理由ってそれしかないんだけど? そんなこともわかんないのか? お前は」
と榊原弟にそのまま理由を伝えてやる。その言葉に榊原弟はなんとか起き上がりながら
「くそっ。なんで姉さんはお前なんかを……」
と僕に返してきたのだった。
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