第37話 事情
僕と風間先輩は放課後校門で待ち合わせた後、○○病院へと向かった。ふたりとも身近な人が病院にかかるということで無意識に無口になっていた。特に僕はこの前まで病院に怪我でやっかいになっていたのであまり良い印象を持てなかったこともあると思う。なぜ病院にいるかの理由もわからないわけで。
だからかいつの間にか早足にもなっていた。
僕たちは病院につくと窓口でメモにある部屋の場所を窓口で確認し即座に向かう。
そして部屋につくと直ぐに僕はドアをノックする。
けれど反応がない。何回かノックするけれどそれでも誰の声もしない。仕方なく僕はドアを開ける。すると
「入ってこないで。しばらく誰とも会いたくない! 」
そうベッドから叫ぶ榊原先輩がそこにいた。
相当気が立っているのかいつもの榊原先輩の声ではなかった。来たのは良かったがここまで荒れているとは思わなかったと思うも様子を見ると大きな怪我をしたわけではなさそうだった。ただ、どうも脚を怪我しているようでそこにはギプスがしてあった。
「榊原先輩、僕ですけど。会いたくなかったら帰りますけど……心配だったんで何も持ってきてないですがお見舞いに来ました」
僕がそう言うと、榊原先輩は急に顔色を変え
「え? なんで? 坂井さんがここに? 誰にも病院を教えてないかったのに」
と慌てて僕にそう告げたのだった。
「えっと。どうしましょうか? 帰ったほうがいいですか? 」
と僕は風間先輩を見ながら念の為もう一度尋ねると
「いえいえ、入ってください。すいません。恥ずかしいところをお見せして。私の家族かと思いまして」
とどうも家族の方が入ってきたと勘違いしたようだった。うーん。なにかあったんだろうかと僕は思いながらも風間先輩と目を合わせた後部屋へと入っていく。
「あっ風間さんもいらっしゃったんですね。ありがとうございます」
入ると僕と一緒に風間先輩がいることに気づき、榊原先輩はそう告げる。
「いえ、坂井くんに聞いて私も心配でしたのでお邪魔しました。まあ、坂井くんとふたりきりのほうが良かったかとは思いましたが」
と少し冗談のように風間先輩が言うと
「まっそんな事言うのね。ふふふっ」
と榊原先輩は少し笑みを浮かべて笑っていた。
「ふふふっ。ごめんなさい。ちょっと動けないのでそこに椅子があるので使ってください」
榊原先輩は経っている僕たちに椅子を勧めてくれたのでお礼で頭を下げた後ふたり椅子に座る。そして
「えーと。どうしたのか聞いてもいいですか? 」
と僕は前置きをおかず、何があったかを聞いてみた。それに対して榊原先輩は
「はい。話しても問題ありませんので。まあ家族内のことなんですけどね」
と言うとちょっと寂しそうな顔をしてから説明してくれるのだった。
「えーとですね。広斗のことなんですが両親に話しました。坂井さんにしていたことを。ですけれど話になりませんでした。信じようとしない、広斗がするわけ無いと。それで……話し合いなんてことにはならず、ただ私が叫んで伝えるだけ……の一方的な会話にしかならず。私は諦めてしまいました。ごめんなさい。役に立てませんでした」
ふむ。わざわざ話してくれたんだ……それでうまく行かなかったんだな。そこまでしなくてもよかったのにという思いとともに、そこまでしてくれたんだという喜びもあり
「榊原先輩、ありがとう。でもそこまでしなくても良かったんですよ? 」
とお礼を述べる。けれど
「いえ、これはしないといけないことだと思いますから」
と自分の家族のことだと当たり前のように僕に返事を返す。そして
「で、ですね。話にならないと会話を打ち切ったんですが、その後に広斗と言い合いになりまして……広斗が何をいいたいのかわからない不毛な言い合いにしかならず私は話にならないと無視して部屋に戻ろうとしたところ広斗が私を掴もうとした拍子で誤って階段から落ちてしまいまして……脚を怪我してしまったというところです」
と榊原先輩は続けて説明をしてくれる。怪我の原因は榊原弟ということか。だから僕じゃ役に立たないと言った? 会話も原因? 怪我をさせたことも? そして会いたくないと言われているから? そんな事を思案するも榊原先輩の怪我の具合も気になり
「脚だけ? 他は? 」
僕がそう尋ねると
「はい。その他の検査は終わりましたので。問題なさそうです。それで家族とは話にならず、今は家族と話をしたくないと「部屋に入ってこないで」と叫んでいたわけです。お恥ずかしい」
と少し頬を染めてそう僕たちに答えてくれた。とりあえず怪我の方はしないほうがいいのは確かだけれどそれでも脚だけで済んでよかったと僕は思ったのだった。
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