第36話 メモ



 翌日、学校に着くと教室には榊原弟が来ていた。それを見てそれなら榊原先輩も今日は来ているかな? と少し安心していたのだが、僕が席につくと


 僕のもとにひとり近づいてくる人物が居た。それは榊原弟だった。榊原弟は別に僕に声をかけることもなくポケットからメモを出して僕の机の上に放り投げてきた。


「榊原。なんだこれ? 」


 僕が不思議そうに榊原弟に尋ねると、苦虫を噛み潰したような顔で


「今日、そこに行ってくれ。俺じゃどうしようもない」


 とメモにある場所へ行けと僕に告げてきた。にしてもなんだこれ? 榊原弟は僕に対して何かしら嫌悪感を持っているからいじめてきたはずなのに俺じゃ無理だから行ってくれと? 内容を見てみると○○病院と名前が書かれ、住所と部屋番号が書かれていた。へ? だれか病院にいるってことか? 


「いきなり渡されても誰かわからないところに行けるわけ無いだろ? 誰だよ? 」


 と僕が榊原弟に尋ねると少し俯いた状態で


「姉さんだよ。悪いが見舞いに行ってくれ」


 と言い残し僕から離れていった。榊原からその言葉を聞いた僕は唖然とした。榊原先輩が病院にいる? あんなに元気だったのに? なにかあった? そう思うと僕は放課後に即座に病院に行こうと思うのだった。




 昼休み、僕は風間先輩と図書室で勉強をしていた。勉強場所はいろいろと悩んだが図書室が一番いいだろうとふたりで話し合った結果だ。けれど授業中もそうだったのだが僕は身が入らなかった。それは榊原先輩が心配だったからで。その様子に風間先輩も気付いたのだろう


「坂井くんどうしたの? 全然身が入ってないね? なにかあった? 」


 僕にそう尋ねてきた。だから僕は


「そうだった。風間先輩、今日放課後に屋上には行かないから。ちょっと用事があってね」


 榊原先輩の元へと行くため、屋上に行かないことを思い出し風間先輩に伝える。すると


「え? どうしたの? 勉強にも身が入ってないようだし、放課後も居ないって」


 風間先輩も心配になったようで僕に尋ねてくる。そんな風間先輩に僕は隠すこともなくメモを取り出し


「今日さ、榊原弟が僕に渡してきたメモ。○○病院。ここに榊原先輩が居るらしい。榊原弟からそこへ行ってくれって言われたよ。それに俺じゃなにもできないって言ってたな」


 と伝えると、風間先輩は驚きながらも


「え? なら私も行く。行っていいかな? 私も榊原先輩なら心配なんだけど」


 私も行くと僕に告げてきた。ただ、どんな状態かわからないわけでどうしたものかと思っていると


「風紀委員も今日は急用ということで休ませてもらうようにしてくるわ。それなら遅くもならないからいいでしょ? 」


 ともう行く気満々な風間先輩。でもそれだけ心配しているんだと思うと無碍にも断れないなと思い


「わかったよ。なら一緒に行こうか。放課後、校門前でいいかな? 」


 僕が待ち合わせ場所を告げると


「うん。それが一番早いだろうしそれでいいよ。何事もないといいんだけど」


 と風間先輩は了承しながらも、榊原先輩のことをとても心配そうにしていた。




 結局僕たちはその話をしてから、僕だけでなく風間先輩も心配のあまり身が入ることもなかったので早めに解散することにし放課後に備えることにしたのだった。

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