第35話 勉強を教わるには
色々とあった一週間も終わり、休日を挟んでまた新しい一週間が始まる。まだまだいろいろと問題があるわけで。
そんな新しい一週間の始まりの日、学校へ着いた僕はあることに気付く。それは榊原弟が学校へ来ていなかったこと。別に休んでいることについて先生から話はなかったので理由はわからなかった。だから先週のこともあり榊原先輩大丈夫かなあと僕は考えていた。弟と榊原先輩が揉めたりしていないといいけどなあと。
けれどよくよく考えれば榊原先輩の連絡先なんて知らなかった僕。クラスも知らない。ほんと僕ってなんてやつだ。
記憶を失ってから周囲に関心が薄くなったといっても付き合いのある人の連絡先くらい知っておくべきかなあと僕は思わず反省してしまう。それと同時に学校に復帰してからこういうことを考えられる余裕もできたようで僕も少しは変わっているのかもしれないなんて思うのだった。
榊原先輩の事は放課後にでも風間先輩に聞いてみるかなあと思い僕はその日の授業をいつものようにわからないまま聞き流していた。そう、これも早く解決しないといけないことだったと授業を受け始めてから思い出す。どうするかなあ……クラスメイトに頼るにもイジメのあるクラスで知らない振りをしている人達に教わるのもなあと考えていれば、僕は榊原先輩の事と一緒に勉強についても相談してみるかと思いつくのだった。今頃? と言われても仕方ないくらい時間が経ったけれど。きっと風間先輩にいろいろと言われるんだろうなあと想像してしまう僕だった。
その日は特に何もなく僕は学校生活を過ごすことが出来た。榊原弟の取り巻きも榊原弟がいないせいか今日は全く手を出してくる様子がなかった。
そんな放課後、僕はいつものように屋上へと向かうといつものように空を眺め風間先輩を待つことにした。風間先輩になぜ会いに行かない? そりゃクラスを知らないし風紀委員の仕事の邪魔になるとも思ったし。
そう言えば榊原先輩も今日は屋上に現れないな。はぁ……やっぱりなにかあったのかなあ。
と僕はいつものようにいろいろと思考していると
「こんにちは、坂井くん。今日はなにもないみたいね。ここのところ屋上でのイベント多すぎだよ? 」
といつものように元気そうな風間先輩が微笑みながらちょっとした嫌味とともに声をかけてくる。
「こんにちは、風間先輩。もう大分暗くなったけど。そうそう今日は風間先輩を待ってたんだよ」
僕が風間先輩に挨拶とともにそう伝えると
「え? 私を待ってくれてたの? 私を選ぶってこと? なになに? 」
と訳わからないことをまた言い出す風間先輩。
「何言ってるんですか? いや……今日榊原先輩の弟が学校休んでるんですよ。で、榊原先輩大丈夫かなあと考えたんですけど、クラスもわからないし連絡先も知らないと来た。なんで、風間先輩はなにかわからないかなあと思って」
僕はそんな風間先輩に榊原先輩が気になっていることを話すとちょっと膨れた顔に変わり
「なーーんだ。そういうことね。連絡先は知らないけれど3年1組だったはずよ。そう言えば今日は会ってないわね。ここにも来てないということは学校にも来ていない確率は高そうだなあ。ちなみに私は2年4組ね」
と榊原先輩の連絡先はわからないがクラスは知っていたようで教えてもらうことが出来た。おまけに自分のクラスも付け加えて。
「ありがとう。なぜか風間先輩のクラスまで教えてもらったけど……まあこれから役立つかもしれないから」
僕がそう言うと風間先輩は僕からの言葉が不思議なようで
「えーと役立つってどういうことかしら? 」
と驚いた顔をして僕に尋ねてくる。自分から教えておいてなんでそんな驚いた顔をするのかなあと僕は少しおかしくなるも
「風間先輩にお願いしたいことがあって。ほら。僕って記憶なくしてるでしょ? で、普段の生活には問題ないんですけど……勉強のことはすっかり忘れているようで授業について行けてないんですよ」
と僕は風間先輩に勉強の現状について説明する。すると
「あのね。なんでもっと早く言わないの? もう学校に来始めて結構経つよね? 今まで何してたのよ」
風間先輩は呆れた顔をして僕にそんな事を言う。それに対して僕は
「悩んでいたんですよ。誰に教わろうかと。でもクラスメイトに教わるとか無理だし誰かいないかなあって考えていて。今日やっと風間先輩に辿り着いたと」
ちょっと戸惑いながらそう答えると
「はぁ……ほんと今頃だよね。でも喜んで教えるよ。ふたりきりだよね? いつがいい? いつでもいいよ? 」
風間先輩はとても嬉しそうに僕にそう言ってくるが
「いや、風間先輩は風紀委員の仕事があるでしょ? いつでもは無理でしょ? 」
と僕は呆れながら突っ込むと
「ははは。確かにそうだね。話し合おっか。仕事終わらせたらどこかで話でもする? 」
と少し照れ笑いをしながら風間先輩は僕にそう言ってくれたのだった。
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