第34話 膝枕
僕が頭を撫でるのを止めると少し残念そうにする榊原先輩。と言っても殴られ蹴られれば我慢はできるとは言ってもやっぱり痛いものは痛い。僕が「いててっ」と言っているのを見た榊原先輩は僕の頭を掴んで僕をいきなり倒してくる。なんだと思うと僕の頭は榊原先輩の太ももの上に。
「少し休みましょう。我慢できると言ってもやっぱり痛いでしょう? それとも保健室に行きますか? 」
そう聞いてきた榊原先輩。僕はこれくらいで行く必要もないと思ったし、行って今回のことがバレても嫌だなと思い
「保健室は止めときます。バレたくないので。なら少しこのままで」
そう言って僕はそのまま膝枕をされたままでいたのだった。
僕はいつの間にか眠っていたようだ。僕は慌てて目を開けると4つの僕の顔を見る目。え? 4つ? よく見ると僕の顔を眺めていたのは榊原先輩だけでなく風間先輩も一緒になって見ていた。
「あれ? 風間先輩がいる? なんで? 」
僕がそう呟くと
「よく寝てたよね。事情は聞いたわ。とりあえず私は何も聞いてないことにしたほうが良いのよね? うーん、本来ならさっさと問い詰めて片付けたいんだけどなあ。うん。坂井くん、そうしない? 榊原先輩には悪いけどそれくらいしないと懲りないわよ」
といきなり激しい口調で僕に迫ってくる風間先輩。やっぱりそこは風紀委員というところなのだろう。そんな状況の風間先輩で起きたばっかりの僕はあっさり目覚めることが出来た。そして
「風間先輩、それは止めとこう。というか最終手段ってことで。榊原先輩も困るでしょ? 言わずに解決できるならそれが良いし、僕もやり返してないし」
と僕は少し笑って風間先輩にそう言った。そんな僕を見て風間先輩はため息をひとつついてから
「はぁ、わかったわよ。ほんとに。私は風紀委員なのよ……」
とぶつぶつと文句を言いながらも話を受け入れてくれたのだった。
「そ・れ・よ・り・も」
風間先輩はまだなにか不満があるようで溜めを作った言葉で僕に話しかけてきた。
「風間先輩どうしたの? 」
「どうしたのじゃないわよ。私が来たらそこには榊原先輩に膝枕された坂井くん。私それを見て「えー不純異性交遊? まだ私もしてないのに! 」なんて叫んじゃったわよ。恥ずかしかったわ。風紀委員でありながらまだ私も……なんて言っちゃって」
風間先輩はどうも膝枕された僕を見て驚いたようだった。にしても「まだ私もしてない」ってなんだよ。風間先輩、さっきは風紀委員らしいところ見せたのに台無しだよ。でもそんな風間先輩の話を聞いて僕は思わず笑ってしまう。
「……そこまで大笑いしなくてもいいじゃない。それだけ驚いたの! ほんとにもう」
そんな僕の笑いに不服な風間先輩はほっぺを膨らませてそっぽを向く。そんな風間先輩に申し訳なくなったのだろう榊原先輩。
「風間さん。本当にごめんなさい。私の弟がしでかしたことだったし少し休んだほうが良いと思ったので」
そう風間先輩に頭を下げて謝っていた。それを聞いた風間先輩は慌てた様子で
「いえいえ、そんなに謝らないでください。多分私がここに居ても同じことをしていたと思いますし。ただ……羨ましいなあとは思いましたけど……ね」
そう言葉にする風間先輩が面白くて僕はまた笑ってしまう。そして榊原先輩も面白かったのか笑いだしてしまう。それを見た風間先輩は今度は突っ込んでくることもなく僕らと一緒になって、そう3人顔を見合って笑い合うのだった。
そんな中で僕は気付く。あっスマホ壊されてたんだと。はぁ……どうするかな。まあ今は無くても良いんだけどなあ。それと今日もまあ事が起こったわけだけれど、榊原弟もほとんど姉にいじめが完全にバレてしまったわけだしそろそろ後が無くなったかなあ。
僕は3人で笑い合う中でそんな事も考えていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます