第31話 また明日



 逆に気を使わせるかもしれないと僕と風間先輩は考えあまり長いしない程度に喫茶店で他愛もない話をすることにした。なるべく弟の話や僕のいじめの話は無しにして。話がわからないなりにも事を一緒に考えられる程度に風間先輩は榊原先輩に気を使っているようだ。


 けれど弟がいじめに関わっていたかもしれないという話は榊原先輩にはやはり大きいのだろう。元気になれたとは言い難かった。ただ、それでも泣いてしまったときよりはましになっているように僕には見えていた。


 そんな中、榊原先輩は急にお礼を僕たちに告げてきた。


「おふたりともありがとうございます。気を使っていただいて。とても嬉しかったです」


その言葉に僕は慌てて


「いえ、気を使ってはないんですけどね、僕は」


 とそう返し


「話は聞いてないのでわからないけれど弱っている時はお互いに助け合わないとですよ? 」


 と風間先輩は風紀委員という立場に似合うようなそんな事を告げていた。そんな僕たちの言葉に榊原先輩は


「私ですね。こうやって周りから温かく見守ってもらうようなことってあまりなかったんですよね。家でもどちらかと言えば出来て当たり前だみたいな感じで、失敗すれば冷たく「もっと頑張んなさい」と言われるだけ。クラスメイトにもなぜかそれに近い感じで見られてて。心配されるようなことってほんと無くて。なんででしょうね、私も普通の女の子なんですけれど」


 今まであまりない体験だったようで僕たちに自分の思いを話してくれた。その言葉に風間先輩は


「私も似たような感じかなあ。なんていうか遠慮されている? うわべだけっていう感じで。風紀委員にされたのもしっかりしているって思われたみたいで。私のことを何も知らない人たちばかりなのにどうやったらしっかりしているなんてわかるのか私にはわからなかったなあ」


 自分もと同意するような感じで榊原先輩に伝えていた。なんだかふたりは結構環境とか似ているのかなあと思いながら


「ふたりともしっかりしているように見えるね。でもそれってふたりとも綺麗っていうのがあるのかもしれない。近寄りがたいっていうのは。まあ見た目だけね。話すと全然違うからなあ。ひとりはいきなり僕に泣きついてきたし、もうひとりはちょっと天然が入ってるかなあって感じで……」


 と僕が話しているとふたり揃って


「泣きついてきたって何よ……確かにそれに近かったけどさ」


「天然だなんて……そんなにほやってしてますか? 」


 と僕に問い詰め始める。というか綺麗って言ったんだからそっちに引っかかればよかったのになんて僕は思いながらふたりの相手を続けていくのだった。




 そんな話をしていれば結構な時間となっていた。僕たちは喫茶店を出て3人そこで別れることとなる。


「じゃ、また明日」


 と僕がそう告げると


「もしかして初めてまた明日って言われたかもしれない」


 なんて風間先輩が言えば、榊原先輩も


「その言葉はまた明日も会いましょうということですよね。嬉しいです」


 そう言って明日も会う気満々になっていた。別に普通に別れる時に言ってたと思ったんだが確かにふたりにそう言ったような記憶になくて。


 まあ元気になれるなら良いかと僕はもう突っ込むことを止めていたのだった。




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