第30話 3人で行きましょう?



 風間先輩は榊原先輩と言葉を交わした後、僕に何を思ったかいきなり


「ねえ? 坂井くん。今日は私に付き合ってくれるって話だったよね? 」


 榊原先輩がこんな状態の中、そんな事を聞いてきた。そんな風間先輩に僕は少しイラッとしてしまい


「ああ、確かにそうだけどなにさ」


 と少し不機嫌そうにそっけなく返事をしてしまう。そんな様子の僕に風間先輩は勘違いさせたと分かり慌てて


「あっ榊原先輩を放って付き合ってとか言いたいんじゃないの。その時間を使って3人で寄り道していかない? そうしたら榊原先輩も気が晴れるかもしれないかなあ……と思って、その。。。」


 と少し声が尻すぼみになりながら僕にそう言ってきた。それを聞いて僕はなんだ、榊原先輩のことを考えてくれてそう聞いたんだと分かり


「あっ僕こそごめん。そっけない返事しちゃってたね。風間先輩、ありがとう。ちょっと榊原先輩を僕も放って置けないから。でも風紀委員が寄り道なんてしていいの? 」


 と先ほどと変わり僕は優しく笑って風間先輩に問いかける。すると榊原先輩は僕の言葉に安心したようで顔をほころばせて


「それくらいいいでしょ? それに弱った人を放っておくほうが風紀委員としては駄目だと思うよ? 」


 そう返事をしてくれたのだった。




 けれど、今度はそれを知った榊原先輩が困惑顔になりながら


「え? 風間さんと約束があったのですか? すいません。それれなら私を置いてふたりで行ってください。今日はおとなしく帰りますから」


 と申し訳無さそうに僕たちに伝えてきた。そんな榊原先輩を見て僕は少し可笑しくなり


「ふたりとも、結構言い合いなんてしてたけど仲良くなれそうじゃない? ちゃんとお互い思い合ってるんだもん。だから、今日は榊原先輩は素直に好意に甘えておきましょ? というより僕がほっとけないというのもあるからね。あと風間先輩もありがとう」


 僕はふたりに笑いながらそう言葉を伝えた。するとふたりも可笑しくなってしまったのか少し笑いながら


「うんうん。榊原先輩、3人で行きましょう? 」


「えーと……はい。もう遠慮してても仕方ないですね。お供させて頂きますね」


 と明るく言葉を交わしあったのだった。




「風間先輩はいつ頃帰れるの? 」


 僕は風間先輩にどれくらいで風紀委員の仕事が終わるか確認してみた。すると


「屋上って最後なのよ。だから後は戻ってみんな集まってから先生に報告だけね。だからすぐに終わるはずだよ」


 と風間先輩は答えてくれた。


「ならいつもどおりに校門前で待っておくよ。それでいいでしょ? 」


「うん、それでお願い。なら行ってくるね。榊原先輩もまた後で」


 と僕たちは言葉を交わし風間先輩は風紀委員の元へ、僕たちは校門へと向かっていった。


「はぁ……」


 そんな中、榊原先輩はため息をついていた。僕に対してもあるだろうし、風間先輩の予定も潰したことでちょっと参っているのだろうか? そう感じたので


「榊原先輩。もう気にしなくて良いんですよ。相手がもういいって言うんだから貴方が落ちこんでも何も変わりませんよ。それに榊原先輩はなにも悪いことはしていないんですから。それよりも元気な顔を見せてくれたほうが僕も風間先輩も喜びますよ」


 と慰めとも言えない言葉かなあと思ったけれど、僕が思ったことを素直に榊原先輩に伝える。それを聞いた榊原先輩は


「確かに私が落ちこんでもふたりは困るだけなんですよね。わかりました。ただ、今日家に帰ったら広斗とはきちんと話はしたいと思います。だって本当にそんな事をしているのなら姉としても止めないといけませんから。これは坂井くんと関係あるなしにしないといけないことですからね」


 そう言って笑顔を作り僕に微笑もうとする榊原先輩。けれどその笑顔は先程風間先輩と笑いあった笑顔とは違い痛そうに感じてしまうそんな笑顔だった。


 


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