第28話 先輩に必要のない話なんだが



 目の前に現れた榊原先輩を見た金沢は


「へ? なんでお前が榊原先輩と知り合いなの? 」


 と困惑した顔で僕に聞いてきた。すると


「えーと。そちらの方は坂井くんのお友達ですか? 」


 と榊原先輩も不思議そうに僕に尋ねてくる。とりあえず僕は


「ええ、金沢と言います。よろしくしてやってください」


 まず榊原先輩にそう答えた後


「ほら、金沢。挨拶しろよ」


 と金沢にそう告げた。すると金沢も慌てたように


「金沢です。よろしくお願いします」


 と金沢らしくない言葉遣いで榊原先輩へと挨拶をした。そんな金沢を見て僕は思わず笑ってしまう。似合ってないと。


「なんだよ、坂井。俺がそんなにおかしいか? 」


 と不機嫌そうに睨んできた。だから僕は


「ああ、その言葉遣い似合わなすぎておかしいよ」


 と素直に伝えていた。それを聞いた金沢は怒りたいのだろうが、榊原先輩がいる手前で遠慮したのか


「くそっ覚えてろよ? 」


 と一言僕に言ってくるのみで我慢したようだ。そんな態度の金沢に少し笑いながら


「えっと金沢くんですね。坂井くんの友達なら……よろしくおねがいしますね」


 榊原先輩は金沢に挨拶を伝えていた。




 そんな挨拶の後、金沢は多分気になったのだろう僕にあることを告げてきた。


「お前、いいのか? 彼女あいつの姉さんだよな? 」


「はい、ストップ」


 僕はその発言を遮った。なぜって? 金沢が言いたかったのは多分いじめの主犯と思われる榊原 広斗の姉さんと関わってもいいのかと言いたかったんじゃないかと思う。でもさ、関係ないよね、姉さんだからってさ。そんな事で人を選んでも仕方ないし。だから僕は


「それとは関係ないだろ? こんな人が関わると思うか? 何もしていないのに避けるとか僕はしないから」


 と金沢に素直にそう伝えたのだった。



「えーと、なにかありましたか? なにか言われていたようですけど」


 榊原先輩は気になって僕たちにそう聞いてくるので


「いえ、なんでもないですよ。気にしないで」


 と僕は返答した。そんな僕を見ながら金沢は少し困惑した顔をしながら


「はぁ……俺おまえのことよくわからんわ。普通身内を嫌悪したりしても不思議じゃないんだけどねえ。記憶がないせいか? まっいいか。俺は帰るぞ、榊原先輩、またです」


 と言い残し屋上から立ち去っていった。そして残るは僕と榊原先輩。とりあえず僕は


「えっと榊原先輩、どうしたんです? わざわざ屋上まで来て」


 榊原先輩にここに来た理由を尋ねていた。




「それよりも姉さんや身内に嫌悪って広斗がなにかしたんですか? 」


 とどうも気になって仕方ないようで金沢が口に出したことを気にしてしまったようだ。僕がどうするか迷っていると分かったのか


「坂井くん。きちんと教えて下さい。隠さないで教えてもらえませんか? 」


 と真剣な顔をして僕に尋ねてくる。金沢もいらないことを言ってくれたもんだと思いながら


「はぁ……仕方ないです。きちんと話しますよ。別に榊原先輩に話さなくてもいいことなんだけどなあ」


 そう告げた後僕は榊原先輩に事情を話すことになったのだった。




 榊原 広斗が主犯として昔の僕をいじめていたらしいということを。

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