第26話 強まった気配
翌日、学校に行くとクラスメイトの様子が少し変なような気がした。それでも僕は気にしても仕方ないかと僕の机へと向かう。すると僕の机の椅子がなかった。ほう、椅子を隠すかと思いながら周りを見渡す。するとクラスメイトは僕から顔を背けてしまっていた。
さてどうするかと僕は考えたけれど、椅子がないのなら仕方ないと机の上に座ることにした。
すると周りは探しに行かない僕を不思議そうにちらちらと見ていた。
そんなクラスメイトはどうでもいいやと僕は気にもせずホームルームになる時間まで机に座ってのんびりすることにした。
そしてホームルームの時間になり先生がやってくる。僕は待ってましたとばかりに
「先生、なぜか椅子が無くなってます。どうしたら良いですか? 」
そう先生へと申告した。するとクラスメイトは「え? 」という感じで僕を見ていた。いやあなた達馬鹿でしょ? 隠されたと分かっているのに探しに行く必要なんてないでしょ? 椅子が無くなってましたって先生に伝えれば良いんだし。先生ならどうにかしてくれるでしょ? と僕は思っていたのだから。すると先生は
「坂井の椅子がないそうだが誰か知らないか? 」
とクラスメイトに一応尋ねていた。というか聞いても出てくるわけ無いでしょ? なんて僕は思ってしまったけれど。思ったとおり誰も名乗り出ず、結局先生が用意してくれるということで話は収まったわけなんだけど僕としては先生それでいいの? という思いしかなかったんだけどね。なぜ無くなったかを追求しない先生ってなんなんだろって思うよね、普通。
僕は先生についていき椅子がある空き教室へと連れられていった。そこで
「どれか好きなのを持っていってくれ」
と先生は言い残し職員室へと戻っていったのだった。
そんな先生の態度にこりゃいじめなんてものがあるのって先生のせいもあるんだろうなあと思わざるおえないのだった。
教室に戻れば1時間目は始まっており、ガランと扉を開け放ち僕は椅子を持ったまま
「椅子を取ってきました。席に戻ります」
と先生およびクラスメイトに告げた後、平然と扉を締め僕の席に戻り椅子を置いて座った。少し困惑していた先生は正気を取り戻したのか
「坂井くんの話は担任から聞いていたわ。では授業を再開しますね」
と特に何も言わず授業を再開したのだった。
さて、僕はいつものようにわからない授業をただ聞く作業に。ただ、いきなり今日椅子を隠すという行為が出たことが気になっていた。昨日佐竹との関係がバレたから? 榊原先輩に言ったから? それとも関係はない? といろんなことを考えてしまい、いつもなら苦痛の時間である授業もあまり気にならずに過ぎていったのだった。
昼休みに入ると僕の方に数人が向かってきていた。よく見てみると金沢と漫才していた奴らだとわかる。なので思わず金沢を見てしまうが、金沢は知らんと言いたげにそっぽを向いてくれていた。僕は金沢のそんな態度を見て来たら来たらで仕方ないかとこの前使った同じ作戦、録音を始めて彼らを無視したまま弁当を取り出し昼食を取ろうとしていた。
「おい、坂井。飲み物買ってきてくれないか? 」
と一番偉そうにしている人、あっこの前も金沢にふっかけていたやつだと思い出しながらそんなことを言ってくる彼の話を聞き流していた。僕は知らないふりをしてそのまま弁当を食べ始めた。すると
「おい、聞いているのか? 買ってこいって言ってるんだよ! 」
と怒鳴って言ってきた。うん、昔ならびくついていたんだろうなあと思いながら
「なんで? 」
と僕は彼にそう尋ねた。
「なんでじゃねーよ。昔みたいに俺たちのいう事聞いてたら良いんだよ! 」
と理由のかけらもないそんな言葉を僕に吐いてきた。だから僕は
「ん? もしかして昔の僕をいじめたりしてたってことかな? 」
と僕は気づいてないような素振りで彼に再度尋ねた。
「いじめなんてしてねーよ。教育だよ、教育」
すると彼はお決まりにあるようなそんなことを言ってきた。さすがにもう相手にしてられないと僕は思い
「あのね、今は便利なものがあるんだよ? とりあえずさ、しっかり今の会話録音してるからさ、どっか行ってくれない。そしたらわざわざ先生に言ったりしないからさ」
と僕はスマホを取り出しそう告げた。すると彼らは数人で「やばい、やばいよ」「昔とぜんぜん違うじゃん、こいつ」とぶつぶつと騒ぎ出し始めた。
「後ね。金沢にしたように屋上に呼び出して集団でいたぶろうと思っても無駄だからね。僕、退学なんて気にしないから教室でもしっかり相手させてもらうよ。あっそれと金沢との屋上の会話も録音してるから。これ奪い取ってもそっちがあるから意味ないよ? 」
と僕がそう伝えると
「なんでそれを知って……くっくそ、いくぞ」
とその人だかりは僕の前から離れ教室から出ていった。そして思う。ほんとあいつら同じように失敗してるし考えが足りないよなあと。
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