第19話 ダブル告白



 さてと僕はどうするか迷ったけれど、結局


「どっちでも良いですよ。好きな方を選んでください」


 と相手に丸投げにすることにした。だって面倒くさいんだもの。それに榊原先輩に至っては見ていても別に害はなさそうだしなあと思ったし。害があるのは多分弟だけなんだろうなあと僕はそう考えたわけだ。


「折角の機会ですから……でしたら伝えさせてもらってもいいですか? あのですね。一目惚れで」


 ん? 一目惚れとか聞こえなかったか? 僕は吃驚したようにそれを聞いていると


「ちょっと待って。なんで先に言われちゃうのよ? どういうこと? 坂井くん? 」


 と今度は風間先輩が慌ててそんな事を言ってきた。いや、そんな事言われても僕わかんないって。それに先に言われたってどういうことよ? 


「いや……僕に言われてもわけがわかんないって。榊原先輩。一目惚れって僕に? 」


 僕がそう聞くと榊原先輩は顔を赤らめながらもコクンと頷いたのだった。




「そういうわけで弟に坂井くんのことをいろいろと聞いていました。自分で見に行ったりするのが恥ずかしかったので……もしバレてしまったらと思うと。でもそうしているうちに佐竹さんと付き合い始めたよって弟から聞きまして……後悔していたんですよ? そして今日今度は風間さんと一緒にいるところを目撃してしまって気が動転して声をかけてしまいました」


 と今日僕たちに声をかけた理由を説明する榊原先輩。にしても一目惚れと言われても僕は榊原先輩のことを全然知らないわけで、いや記憶ないからほとんどの人のこと知らないんだったわ。


「ちょっと待って。私も言っておくね。気兼ねなく話してくれる、壁がない坂井くんのこと気になってるの。多分好きなんだと思うの」


 と今度は風間先輩が告白してきた。いや……なにこれ? どういう状態?


「いや、ふたりとも落ち着いてもらえます? もう……仕方ない。はっきり言わせてもらうとですね。記憶ないんで好きと言われても僕どうしたら良いかわからないんですよ」


 とこのままでは収まりが多分つかなくなるなと思った僕は今告白されてもどうしようもないと伝えてしまうのだった。




「そうですか? えっとこれって振られてしまったということですか? 」


 と榊原先輩はそう尋ねてきた。


「うーん。振るも振らないも今はそういうの決められないってところですかね。そんな余裕もないですから。まずは学校生活の立て直しからしないといけないんで」


 僕が榊原先輩にそう伝えると


「ならまだチャンスはあるってことだよね? 手伝っても良いんだよね? というかちゃんと私も見てよね? 」


 と今度は風間先輩が追撃をかけてきた。はぁ……頭の中パンクしそう。


「いやふたりとも綺麗なんだから僕じゃなくてもいっぱい他にいるでしょうに」


 僕はなんとかそう伝えるとふたりは綺麗という言葉に反応して


「「綺麗だなんて……」」


 顔を真赤にして黙り込んでしまったのだった。いや……ほんとなにこれ? どうすんのと僕は困ってしまうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る