第18話 一緒に帰ります



 榊原先輩から僕自身が知らない情報を話されて僕は少し混乱してしまった。でもそれより先にと僕は周りを見回した。なぜかというと綺麗なふたりの先輩に挟まれ校門で話していれば絶対目立つと思ったからだ。


「とりあえずここだと目立つんで帰りながら話します? 榊原先輩はどっちの方向ですか? 」


 僕は帰宅先がどちらか聞いてみた。風間先輩は駅から電車を使うと言っていたので途中まで一緒に帰れることは分かっている。ちなみに僕は徒歩のみだ。


「えっと私もご一緒してもよろしいんですか? 」


 と榊原先輩は少し嬉しそうにそう尋ねてきた。いや僕としてはこの場から早く移動したいんです。ただ、僕が榊原先輩とも一緒に帰ろうと考えていることが分かったのか風間先輩が少し不満顔。仕方ないと僕は風間先輩の耳元で


「ふたりで帰れずすいません。ただ、僕の知らないことを榊原先輩は知っているみたいなんできちんと聞きたいんですよ。だから勘弁してください」


 と囁くと仕方ないなあといった顔をして


「記憶がないんだもんね。仕方ないよね。ただし、また別の日に帰りましょうね。ふ・た・り・で」


 と僕に告げたのだった。




「ええ。というか僕の知らないことをなぜか榊原先輩は知っているようなので話を聞かせてもらえませんか? 」


 と僕が言うと


「知らないことですか? えっと私がわかることなら。それと私は駅まで歩いてそれから電車ですね」


 と榊原先輩は答えてくれた。それなら途中まで一緒に帰れると


「僕は歩きだけなのですが途中まで一緒に帰れますね。では行きましょうか。ここだと目立ちすぎて」


 僕は苦笑しながらそう伝えた後3人で帰ることにした。




 帰宅途中まずは僕が記憶喪失であることを話しておかなければいけないなと榊原先輩にその旨を説明した。


「え? 記憶喪失ですか? それだと大変ではないですか? 」


 さすがに驚いたようで榊原先輩はそう言ってきた。


「生活には困っていないんですけどね。まあいろいろと問題はやっぱりありますけど」


「よかったら私もなにかお手伝いいたしましょうか? 」


 と榊原先輩はそんな事を言ってきた。いやいや今日初めて話した人になんて、おまけに先輩だし頼めませんって。


「だったら私も手伝うよ? なにかあったら言ってね」


 と今度は風間先輩もそう僕に迫って言ってきた。いやいやあなた風紀委員長でしょ。そんな暇ないでしょうに。


「は、はぁ……考えときます」


 僕は仕方なくそう言って逃げるしかなかった。というより大事な話はこれじゃないってのに。


「すいません。そういうことで僕の記憶がないんです。で、榊原先輩から聞いた佐竹さん? って誰かわからないんですよ。病院にも誰もお見舞いなんて来てませんし」


 と僕は榊原先輩に佐竹さんのことを聞いてみた。そして僕はポケットからクラスの席順表をざっと見てみるけれど佐竹という名字の人は居なかった。


「うーん。同じクラスにも居ないですね。佐竹って人」


 と僕が言うと


「えーと、竹刀もった女性でしたよ。なぜ持っているか知りませんが」


 と聞いた僕は……あいつかと思ってしまった。すると


「あー。竹刀持った一年生って坂井くんを連れてきた娘じゃないの? あの娘佐竹さんだったはずよ」


 と風間先輩は教えてくれた。でも、いや名前はわかったんだけど風紀員室に連れていかれるときもろくに話をしなかったし僕とそんな関係だったとは思えないんだよなあ。


「うーん。昨日、今日と知らずに一緒に居た時間は会ったけどろくに話ししてないんですけど」


 考えれば考える程わけがわからないなと思いもう考えるのは止めることにした。直接聞けば良いことだから。


「もうわかんないんで明日でも直接聞きますよ」


 と僕はふたりにそう告げた。とりあえず1つ目は片付いたので今度はもうひとつ気になることを聞くことにする。


「えっと榊原先輩はなんで弟さんに僕のことを尋ねていたんです? 」


 僕がそう尋ねると榊原先輩は急に顔を真赤にして


「……言わないと駄目ですか? 」


 とぽつりと僕にそう言った。なんだかすごく言いにくそうな感じだなあと思ったので


「えっと言いたくないなら無理はしなくていいですよ。なんかすごく言いにくそうですし」


 と僕が言うと


「えっ聞いてもらえないんですか? 」


 と今度は聞いて欲しそうなことを言う。何なんだよ、先輩って。風間先輩を筆頭にめんどくさい人の集まりなのかよと僕は呆れてしまったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る