第17話 もうひとりの先輩
とりあえず僕は目立ちたくないからとどこで待とうか考えていた。いやどこで待っても目立つよなとめぼしい場所を思いつくことが出来なかった。そんな考え込んでいた僕に
「じゃ風紀員室に戻って終わらせてくるから……どこで待つの? 」
と風間先輩はやはり場所を聞いてきた。
「あーー。それを今悩んでた。どこで待っても目立ちそうなんだもの」
と僕は諦めたように風間先輩に答えた。そして
「だからもう別々に帰らない? 」
と僕が言うと
「なんでそうなるのよ? 一緒に帰るって約束したでしょ? 」
と頬を膨らませながら僕に告げてきた。そして
「もうバレちゃってもいいでしょ? そうしたほうが私としても良いし」
何が良いのかわからないがお気楽なことを言ってくる風間先輩。でも一緒に帰ればまあばれないわけはないんだよなあと
「はぁ、わかりましたよ。なら校門で待ってますから。面倒事が起きそうで嫌なんだけどなあ」
僕は嫌々ながらも諦めて校門で待つことにしたのだった。
校門で待つ僕。ほんと僕何してるんだろ? と少し考え込んでしまう。風間先輩といるとどうも調子を狂わせられるんだよなあ。最初はキリッとしたイメージだったのにほんとは寂しがり屋で拒否すると泣きだしそうで……まだ会って2日なのにこんなに困惑することになるとは思ってなかった。クラスメイトに対してならどうでもいいと切り捨てられていたような気もするんだが。何が違うんだろうね、ほんと。
そんな事を考えていると
「坂井くんおまたせ」
と風間先輩が駆け足でやって来た。
「いえ、もうここまで来たら別にいいですよ。ほんと僕となんで帰りたがるんだうか」
と僕がボヤいていると
「そりゃ坂井くんと話すのが楽しいから、嬉しいから。だからですよ」
そう風間先輩は伝えてきたのだった。
そんな風間先輩とやり取りをしているところに声がかかる。
「あの……すいません。おふたりは付き合っているんですか? 」
いきなり交際確認の言葉を聞いて僕はふっと振り返り声をかけてきた人を見る。その人はどうも先輩のようでとても綺麗な人だった。でも知らない人。そんな女性の人に対して
「あっ榊原先輩、こんにちは。いえ、交際はまだしていませんよ? 」
と風間先輩が返事を返していた。というかなんで風間先輩はまだを強調しているんだろう。それにしても榊原か。気になるなあ。あいつと関係あるのかなあ。
「まだってことは付き合う可能性もあるってことですか? でも坂井くんは付き合っている人がいるって聞いていたんですが」
と意味不明なことを榊原先輩は言った。というかなんでそんなことを知っているんだろう。僕が付き合っている? というかなんで僕のことを知っている? わけがわからん。
「えーと、すいません。僕の事知っているようですが、お会いしたことあったんでしょうか? 」
と訳がわからないため直接聞いてみることにした。
「えーと、直接こうやってお話するのは初めてです。ですが、風間さんと一緒に居たので気になってしまい声をかけさせていただきました。なぜかと言いますと弟から坂井くんには恋人がいるって聞いてましたので。えっと佐竹さんでしたっけ? 一緒に写った写真も見せてもらいましたし」
「えーと、弟というと? 」
「坂井くんと同じクラスのはずですけど。
榊原って名字は僕のクラスにはひとりだったはず。ということは榊原先輩はどうもあの茶髪のお姉さんらしい。それにしても僕って佐竹って人と付き合っていたらしい。でも佐竹って誰だ? そんな人がお見舞いに来てくれたこともなかったし。なんか僕よりも他の人のほうが僕の話を知っているこの不思議感。ちょっと辛いなあ。
これが記憶喪失の弊害ってやつですかね。ふぅ。
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