第16話 壁は相手だけじゃない
膨れていた風間先輩を放っておきながら
「じゃ俺はもう帰るわ」
と金沢は俺に言った。
「うん。まあまた襲われないようにな」
と僕は思わず口が滑っていってしまうも横目で風間先輩を確認してみたるとどうも気付かなかったようで胸をなでおろす。そんな俺を見て
「坂井……お前なあ」
坂井は突っ込んでくる。僕としても失敗したと思い
「悪い、いらないこと言ったよ」
と僕は苦笑しながらそう謝った。
「んじゃな」
そう言って金沢は先に帰っていった。じゃ僕も帰るかなあと思って出口へと歩いていこうとすると風間先輩にがっしりと袖を掴まれた。
「なんで帰るのよ。折角会ったんだから少しくらい付き合ってくれてもいいでしょ」
風間先輩は僕を逃さなかった。けれど
「でもまた白石先輩来ますよ。申し訳ないけどあの先輩面倒くさいです」
と僕が言うと風間先輩は
「ほんと坂井くんははっきり言うのね。だったら後少し校内回れば帰れるから一緒に帰りましょう。だったら白石くんに会うこともないでしょ? 」
と一緒に帰ろうと提案してきた。いや一緒に帰ったら目立つでしょ? と僕は思い
「いや一緒に帰るとか目立ちまくりですよ」
と僕は風間先輩へと意見を伝えた。
「もう暗くなるしわからないよ。きっと。多分? 」
「自信なさそうじゃないですか? 風間先輩も」
「うぅぅ帰ろうよぉ」
風間先輩はこの前の友達になってほしいと言ってきたときのように泣きそうになりながら僕にそう言ってきた。ほんとこの人風紀委員している時と僕と話している時のギャップが激しすぎるよなんて考えながらも諦めて受け入れることにした。
「わかった。わかりましたよ。ってこのやり取り2度目ですよ。それにお願いですから泣き落としはもう止めてください。何もしてないのに罪悪感ありまくりで。ズルいですよ、あれは」
「ごめんなさい。わざとしているわけじゃないのよ。なぜか悲しくなっちゃって」
風間先輩は申し訳無さそうに僕に言った。そんな風間先輩を見て僕は思うことがあり風間先輩に伝えることにした。
「風間先輩、ひとついいですか? 」
「え? なに? 」
風間先輩は不思議そうに僕に相槌をうった。
「いえね。風間先輩は相手に壁があるように感じるって言ってましたよね。そして僕には感じないって。昨日と今日の風間先輩を見てて思ったんですよ。壁を作っているのは相手だけじゃない。風間先輩もだって」
「私も壁を作っている? 」
「そうです。だって僕と話している時と他の方と話している時を比べると風間先輩全然違いますから」
僕は風間先輩自体が全然違うように見えることを伝えた。
「どちらが先に壁を作っているのかはわかりませんがお互いがそれでは仲良くなんてなれないでしょうね」
僕がそう言うと
「そっか。相手が相手がって思ってたけど私も作ってたんだ。そりゃ仲良くなれないよね。そっかあ」
となにか納得しながらも考え込む風間先輩。そして急に
「ということは私の壁は坂井くんなら発生しないってことでいいんだよね。やった」
と風間先輩ははしゃぎだす。僕ひとりだけじゃあまり変わらないんじゃないかなあと思いながらも喜んでいる風間先輩を見るとまあ良いかと思えた僕であった。
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