第14話 漫才か?



 その後も結局何事もなく1日が終わった。喧嘩したせいか? 誰も何もしてこなくなったことを不思議に思うも放課後になるとまた昨日のように屋上へと足を向けてしまっていた。


 また同じ場所に座り空を見上げてぼーっとしていると、今日は別にも人が屋上に来たようで僕は思わず姿を隠してしまった。そんな行動に別に隠れることもないのにと思ってしまったが、やって来た人を見て隠れて正解と僕は思い直した。


 やって来たのはクラスメイト数人と金髪の男、えっと金沢だった。


「そういや今度問題起こしたら停学かもしかすると退学なんだって? お前問題行動多いから坂井と違って即退学かもな」


 数人のうちのひとりがそんな事を言う。そんな場面を見てしまった僕はこれは残しておかないといけないなと考えスマホに録音をし始める。なにかわかるかもしれないと。


「へっどこから聞いたのやら」


 金沢は相手に向かってそう告げた。


「喧嘩してまたすぐ喧嘩なんて人前でできないもんなあ。そんなことすれば処罰が重くなるもんな。しっかしほんとお前ってうざかったんだよな。でもまさか坂井にお前が負けるとは思わなかったよ。まあそのおかげでお前に手が出しやすくなって坂井様サマだ。学校を退学になるのだけはまずいだろうからなあ。金沢くんよ」


「くそっ何もできないと思ってあんな汚い机まで回してきやがって。はあ、でなんだよ。わざわざ呼び出しやがって」


「そりゃわかるでしょ。今までのお礼でもしとこうかなあとね。手が出せない金沢くん」


 うーん。どうも聞いていると金沢っていじめ組と別? 机もこいつらから充てがわれたと。というかこいつらもそんなことせずにどこかで交換とかできなかったのかなと僕は思ってしまう。僕に対しての証拠残りっぱなしだろって。


「おまえらなにか勘違いしてないか? こんなところに連れてきて」


 そんな事を考えていると金沢はそう相手に告げていた。


「はっどういう意味だ? 」


「いやここって人いないよな? 見られないよな? そんな中で手が出せないとでも? 」


 そう金沢が告げるとクラスメイト数人はしまったという顔をしていた。いやこいつら馬鹿だろ。


 金沢はすぐに動き出し相手のクラスメイトひとりひとり片付けていく。殴るところは顔以外、傷が見えないところを狙って。


 全部で4人か。この様子じゃすぐに終わりそうだなあと僕は眺めながら終わるのを待つことにした。




 殴られたクラスメイトたちは結局逃げ出していった。というかこいつら何がしたかったんだろう。呼び出して逆に殴られて……わけがわからないというのが本音だ。


 金沢は流石に4人を相手にしたせいか疲れたようでその場に座り込んでいた。だから僕は


「金沢くんおつかれさん」


 と声をかけてみた。


「はぁ? なんでお前が居るんだよ」


「いや、僕のほうが先にいたんだけど。そしたら後から来た金沢達が漫才してたからなあ」


「なんだよ、漫才って」


「いや……相手が馬鹿だっただけか? 呼び出して逆にやられて帰っていったからなあ」


 と僕は笑いながらそう告げた。


「くそっこれもお前のせいだろが」


 と金沢は僕に突っかかってくるように話してきた。


「いやいや、僕のせいじゃないだろ? 金沢が僕を先に殴ってきたんじゃないか」


 そんなちょっとした言い合いをしていたが、話を変えるように金沢が


「で、何の用だよ」


 と尋ねてきた。


「いや、さっきの人らと話していた内容を聞いているとさ。どうやら金沢は僕をいじめていた主犯と言うか仲間じゃなさそうだなあって思ってね」


 僕がそう言うと


「けっ寄ってたかっていじめしたりしねーよ。俺はお前を見てただイライラしてただけだよ。まあ昨日はいつもと違ったんで思わず声をかけてああなっちまったってとこだ」


 ふむ。なんだよ。全然違うじゃないか。でも疑問に思うことあるんだよなあ。


「ちょっと聞いていいか? 喧嘩した後さ、話聞かれただろ? クラスメイトと口裏合わせたか? 」


 と僕が聞くと


「んなことするわけ無いだろ? というか俺は誰ともつるんでないしな。俺は「クラスのやつらに聞けよ」って言ってろくに話してないぞ」


 金沢は詳細に話をしていないってことか。ならほとんどはクラスメイトからの話ってことで……うわーめんどくさ。金沢から何も出てこないとか辛っ。


「あと2つほどいいか? 記憶を失ってる僕が金沢の顔を見てイライラしたのってなんだろな」


 と僕が聞くと


「んなこと知るかよ。まあイライラしてお前の頭を叩いたり怒鳴ったりはしていたからか? 」


 ふむ。まあいじめられている僕を見て情けなくてイライラしてたってところか? 


「それとさ。昨日金沢ビクついてなかったか? 」


「はぁ? んなことあるかよ。でもまあ不安はあったかもな。手が出したくても出せない状態だからな。学校を辞めるわけにはさすがに行かない」


 ふむ。怯えは唯の勘違いということか。あっそれと


「ごめん。あとひとつ。さっきの会話いるか? 」


 僕は金沢にそう話しかける。


「はぁ? どういう意味だ? 」


「ああ、しっかり録音してるんだよ。なにかあったら出せば良い。金沢も助かるだろ? あいつらから仕掛けてきたって説明できるぞ」


 僕はそう言ってスマホを見せながらニヤッと笑った。

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