第13話 名前
教室に戻るとまだホームルームだったようで、授業は始まっていなかった。
「戻ってきたな。坂井、ちょっと来い」
教室に入るとすぐ先生の元へと呼ばれた。
「なんでしょうか? 」
僕が尋ねると
「まだ復帰して坂井のことを説明していなかっただろ? 記憶のこともあるしな」
と先生は僕に言った。確かにそのことを説明しておかないといけないことなんだよなと僕は理解した。
「はい。わかりました」
僕はそう言ってクラスメイトへと向き
「一月ほど前事故に会い、私、坂井 繁は全てではありませんが、多くの記憶を失っています。そのため、皆さんのことも名前さえも覚えていません。これからまた覚えていきたいと思いますのでご迷惑をおかけしますがよろしくおねがいします。先生、こんなものでよろしいですか? 」
僕は先生にそう告げると
「ああ、席に戻っていいぞ」
と答えてくれたので僕は自分の席へと向かい座る。
ただ、僕が記憶喪失と聞いて驚いたのだろうクラスメイトはざわついてしまう。そこで、それを遮るように先生は
「そういうことで坂井も大変だろうからみんなも助けてやってくれ。ではホームルームを終わるぞ」
とホームルームを締め教室から出ていったのだった。
その日の授業も僕は苦しみながらもなんとか話だけを聞いていた。わからないけれども。そうして思う。これは誰かに教えてもらわなければと。でも誰に教えてもらう? 居ないよな? クラスメイトは全滅だろうしなあ……と悩んでいるとある方向から視線を感じた。なんだと思ってみてみると茶髪の男が僕を睨むように見つめていた。そして僕と目があったかと思うとすぐに目をそらしていた。うーん、茶髪の男もなにかあるのかなあと僕は気にしてしまう。
「あっそうだ!」と風紀委員室に行っている間に僕の机にはクラスメイトの名前を覚えるようにだろう席順表がおかれていた。そして先生のメモだろう「これで名前を覚えるように! 」と書かれていた。一応考えていてくれていたんだと先生に感謝する。ほんと名前がわからないと例えば金髪男とか茶髪男、竹刀を持った女子生徒とかわけわからん呼び方をこれからもしないといけないのだから。
えっと……まずはあの金髪男は
そして次に茶髪男は
そんな事を考えながらも僕自身、一度に名前は覚えられないと思いとりあえずこのふたりだけはと頭の中へと記憶することにした。
そして僕はこの席順表は持ち歩かないと大変だろうなと思いポケットへと直しこんだのだった。
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