第07話 風間先輩の望み



 風間先輩ははっきりと伝えてほしい? ってこと? さっぱりわかんないな。


「うーん。風間先輩がなにか言いたいのかさっぱり。どこかぶつけました? 」


 と僕が聞くと


「うん、こういうやり取りやってみたかったのよ」


 とまたわけのわからないことを言い出した。さすがに僕も相手にするのが嫌になってきたので


「風間先輩ほどの人ならあなたの望むことを言ってくれる人なんてすぐ見つけられるでしょ? 別で見つけてください」


 と僕は面倒くさそうにそう告げた。すると風間先輩は僕を怒らせたと思ったようで


「ほどって何よ。あれ? もしかしてなにか気に触った? そうだったらごめんなさい」


 といきなり謝ってきた。なので僕は


「いえ、謝らなくていいです」


 と風間先輩に告げてもうここから去ろうと立ち上がった。すると


「ねえ坂井くん。少しだけでいいから話を聞いてもらえない? 」


 と今度は僕に話を聞いてほしいと悲しそうな顔をしながら懇願してきた。風間先輩のそんな顔を見てしまうと僕がなんだか悪いことをしているような気がして気まずい気持ちになってしまい


「わかった。わかりましたよ。だからそんな悲しい顔しないでください。なんだか僕が悪いようじゃないですか」


 と僕はそう伝えとりあえずまた座り込んだ。




「坂井くんを探していたのはね。いじめのこともある……いえこれは坂井くんを探すための都合のいい理由だね。多分坂井くんを探していたのは私のためだと思う」


「風間先輩のため? 」


「うん。私の周りって私が風紀委員長って言うこともあるのかもしれないけれど本音で話してくれる人がいないの。誰と話してても壁があるようで。それが辛くてね。でも今日君と話した時にすごく本音で話してたわよね。あの時は事情聴取という特殊な時だったけどもしかしたらそれ以外でも話してくれるかなって」


 と風間先輩は話してくれた。でも僕が思うに


「風紀委員長っていうのもあるでしょうけど、風間先輩って綺麗なんで近寄りがたい雰囲気があるからっていうのもあるんじゃないですか? 」


 と僕が言うと顔を真赤にして


「綺麗って……照れるじゃない」


 と僕を手でバチバチとたたき始めた。


「痛いですって。でも告白されたりしてるでしょ? 風間先輩なら」


 と痛がりながらも僕はそう告げると、風間先輩は急に叩くのをやめて


「告白されることがあるのは確か。でもそんな人でも壁は無くならない。私を遮るような壁を感じるの」


 と寂しそうに僕に応えた。


「でも今坂井くんと話してみて私の思ったとおりだったの。私に対して普通に扱ってくれてるの」


 と今度は嬉しそうに僕にそう伝えてきた。そんな風間先輩を見てこの人は表情がコロコロ変わる人だななんて思いながらも僕は


「ごめんなさい、別の人を探してください。僕には風間先輩の相手なんてできませんよ」


 と断りを入れた。


 なぜって? 学校へ復帰したと思ったらいじめを受けていたってことが分かりおまけに喧嘩をして教室に戻るのも面倒くさいそんな状態になっている僕が女性とゆっくりお茶でも飲んで会話? そんな余裕なんて多分ない。


「それに僕の近くにいるといじめの問題もあるし風間先輩に迷惑がかかるかもしれませんし諦めてもらえます? 」


 僕は風間先輩を言葉で突き放した。すると風間先輩は駄々をこねるように


「ねえ? いじめの問題、私も手伝うから……友達になってよ。もうひとりは嫌なのよ。壁なんて見たくないのよ」


 と涙を流しながら僕に訴えかけてきた。


 はぁ……なんなんだよ。初日から。いじめに合うわ事情聴取されるわ最後には女性に友達になってと泣きながら懇願される? この急展開って記憶をなくした人には辛くないか? 僕は空を見上げながらそんなことを思うのだった。

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