第03話 風紀員室へ
「ほら。あなた達も見てないで倒れている人を助けてあげて」
竹刀を持った女子生徒がそう告げると、ただ見ているだけだったクラスメイトは金髪の男の元に数人行き助け出そうとしていた。
「いってえなあ……くそってめえ」
金髪の男は助けを受けながらもそう言いながら僕を睨んできた。けれど僕はどうでもいいかと男から目をそらす。
「ほら。あなたはこっち来て。着いてきなさい」
と竹刀を持った女性に呼ばれたので僕はまあいいかとその女子生徒の元へと向かっていると
「おい。待てよ」
と金髪の男が助けられた後追いかけてこようとした。吹っ飛んだ割には元気そうだなと思うも僕の力って弱いんだなあなんて思いながら男は無視して教室のドアを出て女子生徒へとついて行ったのだった。
校内がよくわからない僕はとりあえず女子生徒の後を何も言わず着いていくことにした。にしても復帰しょっぱなからやっちまったなあと今更ながら思っていた。それでも記憶をなくしてまでいじめられるわけには行かないしなあなんて今日起こしたことを考えながら歩いていた。そんな僕を竹刀を持った女子生徒はちらちらと確認しながら目的の場所へと向かっているようだ。
すると
「坂井くん、あなた静かでおとなしい人だと思っていたけど……」
なんて女子生徒が話しかけてきた。なので僕は
「あなたは僕のこと知ってるんですね。けれど以前のことは僕自身わからないので……そうだったとは聞いてますがね」
とりあえず女子生徒の言葉に答えた。
「以前は? 何言ってるの? 」
と意味がわからないという感じで女子生徒は問い返してきた。
「ああ……意味分かんないですよね。いいです。気にしないでください」
だから僕は別に詳しく話す必要はないなと話を止めることにした。
連れてこられたのは風紀員室。こんなところがあるんだなあと僕はドアの表札を見上げながら思っていた。
女子生徒はドアを開け中を確認すると「失礼します」と一言の後「入りなさい」と僕にそう言った後風紀員室へと招き入れた。
僕が入ると女性の先生らしい人と先輩らしい女子生徒、そして男子生徒がいた。
「なにかあったのですか? 」
先生らしい女性が竹刀を持った女子生徒に尋ねてきた。
「ええ、1年2組で喧嘩がありましてその1人を連れてきました。もうひとりは倒れていたのでクラスの生徒に助けるよう頼んで……」
竹刀を持った女子生徒がそう言っていたところに風紀員室内にいた先輩らしい女子生徒が
「でしたらあなたはそちらに向かって事情を聞いてきてくれる? 」
と竹刀を持った女子生徒に告げると「わかりました」とその女子生徒は教室を出て多分教室にだろう、事情を聞くために向かっていったようだった。
「えっと、まずは私達の名前はわかるかな? 」
先輩のように見える女子生徒がそう尋ねてきたので
「えーとわかりません」
僕はそう返す。すると男子生徒が
「先生もわからないのか? 」
と聞いてくるので仕方ないと
「すいませんが、ひと月前に事故に会いまして記憶をなくしています。なのでこの学校の誰一人として名前を覚えていません。これでいいですか? 」
僕がそう言うと、先生らしき女性が
「ああ……あなたが坂井くん? 学校側で事情は聞いてるわ。みなさん、彼が言うことは本当よ」
と先生らしき女性がみんなに簡単にだが間違いないことを証明してくれた。
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