第41話恋を応援しても大丈夫だよね?
「とりあえず、今日はこの町の宿に泊まろう。」
兄がそう言うと、みんなで宿屋に向かって歩き出す。
その途中のことだった。私達は後ろから近づいてくる馬車に気付かなかった。
「マドカちゃん!危ない!!」
湊がそう言うと間一髪でマドカを抱き寄せ助けたのだった。
「あの、お兄ちゃん。マドカさんって男性恐怖症でしたよね?」
私は小声で兄に話しかける。
「ああ、そのはずなんだが。」
しかしマドカの態度は違っていた。
「あ、あの。ありがとうございます湊さん・・・。」
少し顔を赤めて湊に礼を言う。
「ううん、大丈夫?ケガはない?」
「はい、すみませんでした。」
そして宿屋に到着した。
「じゃあ、俺と湊が同じ部屋、ほのかたちは3人で頼む。」
兄が宿屋で部屋を取る。
「お兄ちゃんがどうしてもっていうなら私が一緒の部屋で寝てあげますよ?」
私が兄の腕に抱きつく。
「いやっ、そんなわけないだろ!」
兄が少し顔を赤くすると私を引き離した。
おかしい。いつもなら笑って私の頭に軽くゲンコツが飛んでくるはずなのに。
するとマドカが話しかけてきた。
「あの、ほのかさん、よろしいんですか?その、お兄さんが女の方と二人きりの部屋なんて・・・」
「「「「えっ!?」」」」
マドカ以外の全員の口が同時に開く。
「あ、すみません!伝えてませんでしたっけ?湊さん、ああ見えて男の方なんですよ。」
私がマドカに説明する。
「えっ!?男・・の・・・人?そうだったんですか!?ごめんなさい、私てっきり!失礼なことを申しました。ほんとにごめんなさい、湊さん!」
「いや、いいんだよ。ボクが好きでこんな格好をしているんだから。気にしないで。慣れてるから。」
マドカが湊に一生懸命頭を下げる。
そして宿屋で食事や入浴を終えて、部屋の中、リアとマドカの3人でくつろいでいたらマドカが、私に話しかけてきた。
「あの、ほのかさん。相談に乗ってもらえますか?」
「なんですか?私にできることなら何でも言ってください。」
「はい、あの。私、はじめてなんです。男の方に触れても何もなかったのは・・・。ほのかさんもご存知だとは思いますが、私男の方が苦手で少し触れられるだけで投げてしまうんです。」
私は黙って話を聴く。
「でも湊さんは違いました。まぁ、私が知らなかったということもあるとは思うですが。ですが湊さんが男性だと知った今でも湊さんにはちゃんと触れることができると思うんです。」
「・・・・」
「というより、私が湊さんに触れたいと感じています。先程から湊さんに抱きしめられたときのことばかりが頭に浮かんできて・・・。こんな気持ちはじめてですから私、どうしたらいいのかよくわからなくて。」
そんなときリアが話しかけてきた。
「マドカお姉ちゃん、ミナトお姉ちゃんが好きなの?」
「す、好き!?」
マドカが叫んだ。
「ちょっとマドカさん、声が大きいです!」
私は慌ててマドカの口を抑えた。
「ごめんなさい、つい・・・。」
「私もそう思いますよ。マドカさんは湊さんのことを好きなのだと思います。」
「そうですか・・・。私が湊さんを・・・殿方をお慕いするなんて。私どうしたら良いでしょうか?」
マドカが顔を赤らめて言った。
「そうですね。まだ告白する段階ではないと思いますから、まずは距離をつめて仲良くすることですね。湊さん、見た目は女の子ですが、可愛い女の子が好きですから。私がお兄ちゃんに甘えてるのを見て、お兄ちゃんのことを羨ましいっていつも言ってました。」
「わ、わかりましたっ!私、頑張ってみます!」
「それで、マドカさん。このことお兄ちゃんに話してもいいですか?きっと協力してくれると思いますので。あ、リアは湊さんに黙ってるようにお願いしますよ?」
リアの方を向いて声をかける。
「はい。よろしくお願いします!」
そして私はマドカの恋を応援することになった。
夜が更け、静まりかえる宿屋の中、私はお手洗いに行った帰り、兄の部屋の前にきた。
「お兄ちゃん、寝てますか〜?寝てますよね〜?入りますよ〜?」
私は小声でそう言いながら部屋に入る。
「それじゃ、失礼しますね〜。」
家にいた時のように兄の布団の中に潜り込む。
「お兄ちゃんの布団の中、あったかいです〜。」
兄の体に抱きついて寝たのだった。
翌朝、俺は何か体に柔らかな感触があることに気づいて目が覚めた。
(ん・・・?なんか体が重い・・・。これが金縛りというやつか?)
そして布団の中を覗いて驚いた。俺の胸の上にほのかの頭が乗っていたのだ。
「なっ!ほのか!?いつのまに・・・」
「すー、すー。ん、お兄、ちゃん・・・すー、すー・・・。」
ほのかはよく寝ている。
(起こすのはかわいそうだな。しばらくそっとするか。)
俺はしばらく動かずにじっとしていた。
(それにしても、ほのか・・・いい匂いがする。こんなにいい匂いだっけ?・・・いや、いかんいかん!これじゃ変態じゃないか!)
「ん、ん〜・・・。」
ほのかの体が僅かに動く。
その度に柔らかな双丘が俺の体に密着する。
(やばい、なんで俺ほのか相手にこんなにドキドキしてるんだよ。ほのかは妹だぞ?)
マズイ、このままでは身体の、主に一部分が妹相手に大変なことになってしまう。
そんな時だった。
バン・バン・バン!
勢い良く扉が叩かれた。
バン・バン・バン!
扉が叩かれる音で目が覚めた。
「お兄さん、湊さん、大変です!!ほのかさんがいません!!起きたらほのかさんがいなくて、お手洗いかと思ったのですがどこにもいなくて!」
マドカが血相変えて入ってきた。
「あ、あの。マドカさん、ごめんなさい。私ならここです・・・。」
私は身体を起こした。
「えっ!?あの、あぁそうだったのですね。お兄さんと寝ていたのですね。兄妹ですもんね。慌てて申し訳ありませんでした。」
「いえ、私こそ黙って抜け出してすみませんでした。」
ポカンっ
兄の手が私の頭をたたいた。
「そうだぞ。ほのかがわるい!まったく、マドカちゃんに心配かけちゃダメだろ!」
「はい、ごめんなさいです〜・・・。」
そんなこんなで今日も1日始まった。
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