第31話お兄ちゃんとデートしても大丈夫だよね?

ハイデンベルクに帰り、ギルドで報酬の金貨40枚を受け取り帰宅する。

「おかえりなさいお姉ちゃん、湊お姉ちゃん!」

リアが出迎える。

「ただいまです。私達がいない間何もありませんでしたか?」

私が尋ねる。

「ああ、特に問題ない。俺もすっかり回復したからもう戦えるよ。」

「回復して何よりですっ。」

「湊、修行の成果はどんな感じだ?」

兄が湊に尋ねる。

「うん、いい感じだよ。もうあんなヘマはしないから安心してください。」

「それならよかった。今日は疲れたろうからゆっくり休んでくれ。夕食は俺が作ったからほのかもゆっくりしてくれ。」

兄がそう言うと夕食をテーブルに並べる。

「ありがとうございますっ!お兄ちゃんの料理久しぶりです。」

そしてみんなで夕食を食べ、体を休めるのだった。

翌朝、兄がみんなをリビングに集めた。

「次の宝玉を探しに行こう。」

「そうね。行きましょう。まずは港町サラボナに船を取りに行かなくてはね。」

ミンティアが答える。

「お船たのしみっ!」

リアが楽しそうに喜んでいる。

とりあえず港町サラボナに向かうことにした。

大陸の一番西の帝都の先にサラボナがある。

テレポで帝都まで行き、そこから向かう。

サラボナまでは特に何ごともなく到着した。

「わ〜、ここがサラボナですか〜!大きな街ですねーっ!」

帝都やハイデンベルクよりも巨大な街だった。

「ここは港町で、貿易も盛んな商業都市だから。」

ミンティアが説明する。

「まずは船を見に行きましょうか。」

「そうだな。港へ行こう。」

そしてまず港へ行くことにした。

船の管理事務所に行き、受付に兄が話す。

「ユウタさまですね。船はこちらで預かっております。ついてきてください。」

そして受付に案内され船着き場に到着した。

「こちらの船でございます。魔力船になりますので、鍵をこちらにさしたらこの水晶に魔力を注入してください。このペダルを踏むと前進しますから、ペダルを踏みながらハンドルで舵をとってください。注入した魔力が切れるまでは動かすことができます。魔力が切れてもあちらの帆を張れば風力で進めます。」

受付が説明する。

日本の一般的なクルーザーよりひと回り大きい帆船だった。

「わ、立派な船ですねーっ!」

「そうね、こんな船をもらえるなんてふとっぱらな大会ね。」

私とミンティアが話していると兄が話しかける。

「さて、船の確認もできたからまずは街を散策しようか。」

兄がそう言うと

「リア、お腹すいちゃったー。」

「ボクもお腹すいたな。リアちゃん一緒にご飯食べに行こうか。先輩たちもどうですか?」

リアと湊が答える。

「俺は別にお腹は空いてないかな。」

「私もですね。じゃあお兄ちゃんは私と見て回りましょう。ミンティアはどうしますか?」

「私は薬の材料を見て回りたいから別行動させてもらうわ。ここで待ち合わせでいいかしら?」

「わかった。じゃあまた後でな。ほのか行こうか。」

「はいっ!」

そして思いがけず兄とデートすることになった。

「じゃあ、どこに行きましょうか?」

「そうだな。とりあえず適当に歩いてみるか。」

二人で歩き出す。

隣を歩く兄の手をおそるおそる握ってみる。いつもなら兄は恥ずかしがって振り払うのだけど、兄のほうから強く握り返してきた。

「人が多いからな。手を放すなよ。」

「は、はいっ!」

思わぬ兄の対応に私は顔を赤らめながら兄の手をしっかり握る。

しばらく歩いていると、露店商に話しかけられた。

「そこの彼氏さんっ!よかったら見ていってくれ!彼女さんのプレゼントにどうだいっ!」

近づいて見てみるといろんなアクセサリーが並んでいる。

「ほのか、何かほしいのがあるか?何個か買ってやるぞ。」

兄がそう言うと、私は1つの指輪を手にする。

「でしたらこれがいいですっ!」

赤い小さな宝石がついた指輪だ。

「それでいいのか?」

兄が尋ねる。

「はいっ!これがいいですっ! 

「じゃあこれをくれ。はい、ほのか。」

露店商から指輪を購入し、私には手渡す。

「ありがとうございます!一生大事にします!!」

私はそう言うと指輪を左手の薬指にはめる。

「大げさだな。それくらいいくらでも買ってやるぞ。」

(お兄ちゃんから初めて買ってもらった指輪ですから…。)

そしてまた二人で歩き始める。

「さっきのお店の人、私を彼女さんって言ってましたね。私達恋人に見えるんですね。」

「ははは、そうだな。ならせっかくだからこうしてみるか。」

そう言うと兄が握っていた手を、ゆびを絡めるように握ってきた。いわゆる恋人つなぎだ。

「お、お兄ちゃんっ!?」

私が驚いて声をあげる。

「たまにはいいだろう。はぐれちゃいけないしな。」

(ふぇぇ。今日のお兄ちゃんはすごい積極的です…。幸せです…。)

そして武器屋をのぞいてみる。

しばらく見て回ると、ある杖が目にとまった。

先にピンクの透き通った石のついた杖だ。

「わ〜、これ可愛いですっ!」

「そうだな。今のシンプルな杖に比べたらいい感じだな。」

「ちょっとこれ買ってきますねっ!」

「それくらいなら買ってやるぞ?」

「大丈夫ですっ!こないだのクエストで報酬たくさんもらいましたからっ。」

そしてピンクの杖を購入した。古い杖は下取りしてもらった。


ユウタ(なんだろう。ほのかが手を握ってきたとき離したくないと思ってしまった。こないだのベッドでの件以来おかしい。こんな気持ちは初めてだ。……。ダメだダメだ!ほのかは妹なんだから!しっかりしろ俺っ!!)


その後も恋人気分で街をぶらついて私は幸せな気分で港にもどるのだった。


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