第29話ナンパされたけど大丈夫だよね?

その翌日。

「お兄ちゃん、腕はもう大丈夫ですか?」

私は心配で兄に尋ねる。

「あぁ、もう大丈夫だ。なんともない。あの後ほのかがずっと治癒魔法をかけてくれたからもうすっかり痛みも消えたよ。」

兄がそう言うと、ミンティアが話しかける。

「ケガは治っても、失われた血液はもどらないからしばらくゆっくりしなきゃダメよ。」

腕が切断された際かなりの出血があった。

「そうさせてもらうよ。まだ少しフラフラするから今日1日は大人しく寝てることにするよ。」

そしてミンティアが部屋から出ていき、二人きりになる。

「じゃあ、お兄ちゃんが寂しくないように私が添い寝しますねっ!」

私はそう言うと兄の布団に入る。てっきり追い出されるとばかり思ったら兄が私を抱きしめた。

「えっ!?お兄ちゃんっ!?」

私は驚いて声をあげた。

「ほのか、心配かけてごめんな。俺がもう少しうまくやっていれば…。今回俺はみんなに迷惑しかかけてない…。うっ…。」

兄が涙を浮かべて私に言う。

私も兄を力強く抱きしめる。

「いいえ。お兄ちゃんは頑張りましたよ。お兄ちゃんが湊さんをかばわなければ湊さんは死んでいたかもしれないんですから。お兄ちゃんには私たちがついてます。1人で何もかも背負おうとしないでください。もっと私たちを頼っていいんですよ。それに私にだけは弱音も吐いていいですからね。お兄ちゃんの妹なんですから。」

「うっ…。ほのか、ありがとうな。……すー、すー。」

そう言うと兄は泣きながら眠ってしまった。

「まったく、お兄ちゃんは私がいないとダメなんですから…。」

私は兄の頭をそっと撫でた。


そして、夕方になり兄がリビングへ起きてきた。

「あ、お兄ちゃん起きましたか?身体の具合は大丈夫ですか?」

「もうすっかりよくなったよ。みんな、今回は心配かけてすまなかった。」

「先輩が無事で本当によかったです!ボクのためにごめんなさい…。」

湊が兄に言う。

「気にしなくていいよ。湊もありがとうな。湊がいなかったら倒せなかったよ。」

「いや、ボクのちから不足です。明日からダンジョンで修行しようと思うんだけど。ほのかちゃんを借りてもいいかな?」

そう言うと兄が

「そうだな。ほのかがいれば安全だろう。ムリはするなよ。ほのか、湊を頼んだ。」

私を見て言った。

「はいっ!」

そして湊の修行が始まった。


「とりあえずギルドに行ってみましょうか。何かいい依頼があるかもしれません。」

「そうだね。行ってみようかな。」

そして冒険者ギルドに向かう。冒険者ギルドに入ると他の冒険者が話しかけてきた。

「よう、ネーチャン達可愛いじゃねぇか。俺達のパーティーに入らないか?」

「お、俺はそっちの子がタイプだなぁ。胸はないがすげぇ美少女じゃねぇか。」

荒くれ冒険者の男が湊を見て言う。

「いえ、間に合ってますので…。」

私は丁重にお断りする。

「いいじゃねぇか。いい思いさせてやっからよ〜。」

男が私に近づいて腕をつかむ。すると湊が話しかける。

「お兄さんたち、私がお相手しますからいきましょう。ほのかちゃんはここで待ってて?」

そう言うと湊が男二人と外に出ていった。


建物の陰になる人通りの全く無い裏道にやってきた。

「さて、ここなら人はこないね。ボクの友達に汚い手で触れてんじゃねぇーよ!!クズムシ共が!!」

ボクは男達に怒鳴りつける。

「あんだと?このアマが!おい、やっちまおうぜ!」

「そうだな。ネーチャン、痛い目をみたくなかったら大人しく服を脱ぎな!」

男たちがボクに言う。

「あいにくボクにそんな趣味はないんでね。怪我したくなかったら大人しく帰りな!!」

すると男たちが

「んだと!このアマ!!」

そう言って殴りかかってきた。

「空間制御!!」

すると殴った男のほうが飛ばされた。

「ぐあ〜〜!手が!!」

男がうずくまり殴った手を痛がっている。

するともう一人の男が懐から銃をとりだした。この世界の銃は銃口に溝などなく鉛球が飛び出すだけで殺傷能力は高くない。

「くそ!これならどうだ!」

バンっ…という音とともに撃った男が倒れる。

「あ、足が〜!!」

男の太ももに当たったらしい。

「ボクにそんな攻撃は効かないよ。それでもまだやる?その傷口から血液の流れを逆流させたらどうなるかなぁ。やってみたいなぁ…。」

すると殴った男が、太ももを怪我した男を肩で抱え、

「ば、バケモノ〜!!」

そう言って逃げていった。


ギルドでしばらく待っていると湊が戻ってきた。

「み、湊さん、大丈夫でしたか!?」

私は湊にかけよる。

「うん。心配しなくてもちゃんと話したらわかってくれたよ。」

「それならよかったですっ!いつもはお兄ちゃんが一緒だからあんなことはなかったんですが…。」

「まぁほのかちゃん可愛いからねっ。さぁ、依頼を探そう!」

ふたりで依頼が書いてある掲示板を見て回る。すると一枚の張り紙を見つけた。

『ソードゴブリンの殲滅』

ゴブリンの上位種で剣の扱いに長けている種族だ。

「これなんてどうでしょう?剣の修行にぴったりじゃないですか?」

私は湊にすすめる。

「いいね。よし、この依頼を受けよう!」

そして受付に依頼内容の書かれた紙を持っていく。

「ソードゴブリンの殲滅ですね?かしこまりました。では、依頼内容の説明をいたします。ハイデンベルクの西の森の中にソードゴブリンの住まう洞窟があります。付近に洞窟は1つしかないので行けばわかると思います。そこへ行きソードゴブリンを討伐してきてください。討伐の証明としてゴブリンの持っている剣を持ち帰ってください。これはソードゴブリンが独自に作り上げた鉱石でできており大変貴重になっています。1つにつき金貨1枚お支払します。材質に価値があるので折れていても結構です。」

受付嬢が説明する。

「わかりました!その依頼受けます!」

湊が張り切って答える。

「では湊さん、いきましょうか。」

そして私達はギルドを出て西の森に向かう。


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