第21話お兄ちゃんと戦っても大丈夫だよね?

「宝玉ってのはどこにあるんだろうな?」

兄が話しかけてきた。

「さぁ。私もよく知らないわ。この世界は3つの大陸で構成されているのだけれど、各大陸にひとつずつ存在すると聞いたことはあるわ。」

「ということは、今いるこの大陸にもあるってことですね。」

「じゃあひとまず色んな街へ行って情報を集めるしかないってことか。」

「そうね。次はイリア村の先にある帝都ルマンダね。」

私達は宝玉の情報を集めるため帝都へ向かうことにした。

帝都に到着すると、とりあえず情報を集めるため冒険者ギルドに向かった。

「こんにちわ〜。」

しかし中には冒険者の姿は全くなかった。

「あら、珍しいわね。冒険者ギルドに人が全然いないなんて。」

ミンティアが言うと

「そうなんです。みなさん3日後に開催中される大会のために特訓されているみたいで…。」

受付の人が答える。

「大会って?」

兄が尋ねる。

「あ〜、あなた方は外からいらしたんですね。実はこの国では4年に一度開催される武術大会がありまして、賞品があまりに豪華なためみなさん競って参加するんです。そのせいで最近は依頼をうけてくれる冒険者が少なくて困ってるんですよ〜。」

「へぇ、武術大会かぁ。出てみたいな。なんかルールとかあるのか?」

「特に制限はありません。武器は何でもよくて、魔法も大丈夫です。会場は特殊な空間で作られてて、致命傷以上のダメージを受けると自動的に外に出されるので死ぬことはありません。相手を気絶、または外に出すほどのダメージを与えるか、5分以上動けない状態にすれば勝利です。」

「わ、魔法も使えるんなら私も出れますねっ!お兄ちゃん、一緒に頑張りましょうっ♡」

私はそう言うと兄に抱きつく。

「だから抱きつくなって!ところで賞品ってなんだ?」

「今回の賞品は小型帆船です。」

「船ですか〜。すごいですね。」

「その船があれば他の大陸に自由にわたることができるわね。」

「リアもおふね乗りたーいっ!」

「よし、じゃあ出てみるかっ!」

兄が言うと

「私はパス。戦うなんて。」

ミンティアが答える。

「では、出場登録はあちらでお願いします。」

そして私と兄で登録を行なう。


いったんハイデンベルクに戻り、大会に向けて修行することにした。

「じゃあ、私とお兄ちゃんで対人の練習をしましょうっ!手加減してくださいね?」

「わかってるよ。寸止めするから大丈夫だ。」

対魔術師、対剣士対策で練習をはじめた。

「クイック!はい、お兄ちゃんアウトですっ!」

私は開始早々倍速で兄の背後をとり、背中に手を置いた。

「く、油断したか。もう一度頼む。」

「わかりました。じゃあいきますよっ!」

「電光關火っ!」

「スロゥ!」

兄が超速でくるのに対し、時空魔法で遅くした。

「まだだ!」

マジックブレイカーで魔法をやぶり斬りかかってきた。

「はい、ほのかアウトなっ!」

ポカンっ

兄が軽く私の頭をたたく。

「あ〜ん!寸止めじゃないじゃないですか〜。」

「刀は寸止めしただろ。」

「次は負けませんよ〜!デバフ魔法はすぐ解除されるから攻撃だけでいきますっ!」

「よし、いくぞっ!ホーリーショットっ!」

光の斬撃が飛ぶ。

「エアストシールド!」

風のカベで防ぐ。

「電光關火っ!」

「テレポっ!」

兄が斬りかかってきたのを転移魔法でかわす。

「これならどうですか。エアフォールっ!」

兄のまわり四方から風の壁で挟み込む。

「マジックブレイカーっ!」

魔法を打ち消すが消えなかった。

「どうですかっ!?消しても消しても吹き続ける風の壁です。」

「ぐっ、動けない…。ならっ!身体強化っ!」

そう言うと兄が空に飛び上がる。

「天龍閃っ!」

空高く飛び上がった兄が私に向かって降りてくる。落下スピードも加速し魔法を唱えるスキは全くなかった。

刀は寸前でずらして私には当てずに降り立つ。

「さすがお兄ちゃんですっ!」

「いや、なんとかって感じだな。」

今日の修行は兄の勝ち越しで終わった。

「じゃあ、今から晩御飯のしたくしますねっ!」

「あぁ、動き回ったからもう腹ぺこだよ。」


翌日も修行することにした。

「行きますよっ!!ウォーターゴーレムっ!」

水魔法でゴーレムを作り出す。

「斬っても無駄だな。マジックブレイカー!!」

「まだまだありますっ!」

次々にゴーレムを出していく。

「く、間に合わない…。ぐあっ!」

兄がゴーレムにやられてびしょ濡れになる。

「今乾かしますねっ。ホットエア!」

風魔法でびしょ濡れの兄を乾かす。

「今のはお兄ちゃんに当たって崩れましたけど本来は水中に閉じ込める戦法ですよ〜。」

「そうか〜。よし、もう一度だっ!」

「いきますっ!エアフォールっ!」

私は上昇気流で空高く飛び上がる。

「う、高すぎてまったく見えないっ!」

兄は必死に空を探している。

「スキありですっ!」

私は兄の背中をポンとたたく。

「なにっ!いつのまに!?くそ、テレポか…。空ばかり探して気づかなかったよ。」

「まぁ、大会会場はもしかしたら室内かもしれないですけど。」

「そうだな。でも魔物との実践でも使えそうなやり方だな。」

「じゃあ次いきましょうっ!」

そう言うと私はテレポで兄の背後に回る。

「そこだっ!」

兄が転移した私に攻撃する。手刀で軽く頭をたたく。

「どうしてわかったんですかっ!?」

兄に尋ねる。

「まぁ、剣道を長年やってるから気配でわかったんだよ。」

「さすがお兄ちゃんですっ!」

「まだ時間はあるみたいだな。もう1回やっておこう。」

「そうですねっ。いきます!」

「電光關火っ!」

兄が斬りかかってきたのと同時に

「サンドホール!」

すると私の手前に穴があき兄が落ちる。

「うわっ!まさか落とし穴がくるとは思わなかったよ。しかも怪我しないように底の地面を砂地にしてるとは。」

「今引き上げますねっ。」

私は風魔法で兄を引き上げる。

「よし、だいたいこんなもんでいいだろう。明日は本番に備えてしっかり休んでおこう。」

「はいっ!お互い頑張りましょうっ♡」

「こら、抱きつくな。砂まみれなんだから。」

「私も砂まみれになって一緒にお風呂に入りましょうっ!!」

ポカンっ

「調子のりすぎだっ。さぁ帰るぞっ!」

「は〜い…。」

こうして武術大会の修行を終えたのだった。

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