第9話

「成程、お兄様は現在イタリアでヴァチカン掃討を行われておられますのね。」


「はい。一応はヴァチカンの要請による過激派鎮定作戦ですが。」


「名目は気にしませんの。それで、何時頃お戻りになられますの?」


「当主様は1週間以上は間違いなく要と申されておりますが、恐らく一月程は要するかと。」


「…私も向かいましょうか?」


「っ、失礼します。当主様から連絡です。」


『対応ご苦労。パッケージ確保。これよりケルンに連行する。残りはイタリアとEUに任せる。現状では帰還は一週間半程だ。』


「お兄様!お帰りをお待ちしております。」


「伊織?帰ってきたのか。待っていろ。帰る。」


「ケルン大司教座にて教会異端審問を開始する。」


「異端者はカトリック世界を揺るがしプロテスタントや正教会のみならず異教徒共を跳梁跋扈させる原因を作った。神の声を騙り、イタリア及びローマ、ヴァチカンに戦乱を持ち込んだ罪は思い。よって処刑を下す。」


「異議なし!」


簡易裁判により事前の取り決め通り上層部には死んでもらい。外部からの手を入れつつ再生してもらう。


解散後カトリック、我々銀の星つまりはハプスブルク家と聖公会つまりはイングランドのウィンザー家の階段がフランスはパリのノートルダム大聖堂で行われた。


カトリックの内紛集結後に横槍を入れてきた形になる。カトリック界の大物であるハプスブルク家だが、基本は世俗君主。よって中立かつ公正な調停人として俺が派遣されたわけだ。


内容は北部アイルランドの管轄権。北部アイルランドはカトリック教徒が多く、現在まで一貫してカトリック世界の支配下に、ヴァチカンの膝下にあった。それを英国が有する領域の権限を譲渡しろとの要望。

無償かつ速やかに譲渡しろとは舐められた物だ。かつての教会ならともかく現在は我々ハプスブルク家に利益があると判断されており、アイルランドにおける管轄権は1歩も譲るなとのカール大公殿下の御要望だ。


「…ショート・フォン・ベルンバッハ=クロイツェン卿、調停人では?」


「いや、私はハプスブルク家当主オーストリア大公カール殿下の代理人だ。殿下の要望を叶える立場にある。」


「我々も、カール殿下も今まで通りアイルランドにおけるカトリック教会の優越を望んでおられる。聖公会、退け。」


カトリック側代表はフランス人のとある枢機卿。対するイングランド国教会はカンターベリー大主教を送ってくる程には本気だ。


「…国教騎士団を動員させていただくぞ。」


「ご随意に。ベルンバッハ家及びクロイツェンにハプスブルク臣下の全ての魔術師に我々銀の星の全てを動員し英国に攻め込みましょう。枢機卿、協力願えますか?」


「…勿論だ。」


「…1度本国と連絡を取る。」


ご自由にと返し、紅茶を啜る。我々はあからさまに優雅に振る舞う。焦りを煽り、判断力を奪わせて貰おう。

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